もちろんプーチンが再選する! Of course President Putin is reelected!
とまあ、いきなり一行目で結論を言ってしまったが、世間はアメリカ新大統領にばかり注目していて、そのカウンター側の選挙にはまったく注目していない。
しかし、ロシア連邦大統領選挙は来年の3月にあるのだ。だから、アメリカがそうであったように、早くも今年の後半からは、ロシアも選挙シーズンに突入する。
一応簡単に説明しておくと、現在のプーチンは2012年5月に大統領に就任した。
2008年の憲法改正により、大統領任期が「4年→6年」となったため、現在のプーチンの任期満了は2018年5月までとなる。よって、次期大統領選挙に出馬・再選した場合、2024年5月まで在任することになる。
現在の憲法規定では「3選禁止」のために続就任できる上限は12年間だが、またメドヴェージェフか誰かを間に挟むか、あるいは憲法改正という方法もあるで2024年で終わりとは限らない。
問題は「なぜ」プーチンが再選するのに決まっているのか、そして再選した後にロシアと世界はどうなっていくのか、ということだろう。
この記事では、独自の視点でそれを探っていきたい。
ソ連が誕生してから滅亡するまで
どこから話せばいいか迷うが、やはり最低限、ロシア革命の真相から話していく必要はある。世界の人々には歴史の真実を知る権利がある。
20世紀の初期においてロマノフ朝といえばキリスト教圏最大の専制国家だったわけだが、同時に世界最大のユダヤ人差別国家でもあった。たとえば、ユダヤ人は商業活動を制限された上、軍隊に入っても将校への道は一切閉ざされていた。しかも、同時代の西洋がどんどんユダヤ人に市民権を与える方向へと向かっていたのに、ロシアは逆にポグロムに代表されるようにユダヤ人への迫害を強めていった。
だから、1917年のロシア革命は、複数の目的を兼ねた一大謀略だったが、その内の一つが「ユダヤ人解放」だったことは間違いない。ヤコブ・シフが日露戦争の国債を引き受けたのも、トロツキーに革命資金を提供したのも、一つには同胞を圧政から解放したいというユダヤ資本家たちの切実な願いがあったからである。
しかも、その十月革命直後、パレスチナに将来のユダヤ人のナショナルホーム建設を認めるバルフォア宣言が発せられた。イスラエルの建国は、ロシアにおけるユダヤ人解放と連動していたことが分かる。
だから、革命に立ち上がった活動家にユダヤ人が多いのもうなずける。しかし、その比率が、プーチン大統領の言うように「80~85%」ともなると、偶然というより、何かの陰謀ではないかと考えたほうが合理的なのも確かだ、と以下記事で述べた。
いずれにしても、革命によって成立したソ連は、一切の民族的個性を否定した「人工国家」だった。当時のエピソードには寒気がする。教会を中心とする伝統的な共同体は完全に破壊され、“新たな子供たち”は家庭・学校・地域社会において、ロシアの伝統・宗教・歴史から完全に切り離された。古い世代と新しい世代を完全に分離するため、子供たちは家庭内での両親の言動を密告するよう奨励された。親たちは秘密警察を恐れて家庭内でも口をつぐんだ。一般に、毛沢東の文化大革命は極めつけの愚策として知られているのに対して、この“ソ連版文化大革命”の実態は今なお黙殺されている。
もちろん、その理由は、「ロシア民族改造政策」を推進した連中と、今に至るまで欧米のアカデミズムを支配下に置いている連中が、同類だからである。
しかし、記事で述べたように、その計画はスターリンの裏切りを契機として失敗に終わった。しかも、あろうことかソ連内部でのロシア・ナショナリズムの復活を許してしまい、完全に裏目にすら出た。以下の記事の中で、「影の政府史上最大の失敗の後始末を任されたキッシンジャー」と題して、それ以後の経緯を記している。
平たく言えば、またソ連を潰さなければならなくなった、ということ。その大戦略を担ったチームの筆頭にいた人物こそ、キッシンジャーだった。
こうして、「影の政府」は思惑通り、ソ連を崩壊へと追い込むことに成功した。
冷戦終結から「植民地ロシア」へ転落するまで
さて、ポスト冷戦時代の大戦略として、「影の政府」が考えたのは、アメリカを頂点とするピラミッド型の体制へと国際社会を作りかえることだったと思われる。そして「テロリスト」という外敵を作って、米国以下を次第に管理国家へと作り変えていく。
そのための施策が、ネオコンを中心に策定された「防衛計画指針:the Defense Planning Guidance」であり、「9・11やらせテロ事件」だったようだ。
他方、ロシア情勢だが、1991年にはいったん共産党保守派による巻き返しがあったものの、クーデター劇は失敗。軽度の内戦を経て、同年末、ソ連は独立国家共同体(CIS)へと移行し、ボリス・エリツィンが新生ロシアの初代大統領に就任した。
だが、このボリス・エリツィンは、指導者としては凡庸で、その上、どんどんアル中おじさんと化していった。その脇を固めていたのがユダヤ人のプリマコフ。
矢継ぎ早の経済改革で、外資が次々と上陸し、国有企業は民営化されていった。そして新興の企業家が、国有企業が寡占していた富を次々と手に入れていった。
西側の国際銀行団とIMFが入って来て、エリツィン政権を唆し、たんまりとドルを貸し付けた。ここからが地獄の第二ラウンドの始まり。もともと返済能力がないため、1998年8月、ロシアは対外債務不履行に陥る。しかも、肝心の大統領がウォッカを浴びるように飲んでいて、健康状態も悪化しており、危機管理能力ゼロ。
結局、ロシアはデフォルトし、銀行は取り付け騒ぎに陥った。そして、経済が事実上崩壊すると、IMFが“金融進駐軍”としてまたやって来る。経済危機の最中、ロシアは銀行家たちに次々と担保の国有資産を奪われていった。この頃には、ロシア経済の大半をオリガルヒと呼ばれる7大新興財閥が支配するまでになった。そのうち、ボリス・ベレゾフスキーやミハイル・ホドルコフスキーなど、なんと6社がユダヤ系。
彼らはむろん「影の政府」の現地代理人である。
だが、このベレゾフスキーをうまく担いでのし上がった男がいた。彼は密かに「ロシアを取り戻す」と堅く決意していた。ウラジミール・プーチンである。
プーチンの登場と反撃
さて、「影の政府」としてはロシアを植民地化したつもりだったが、2000年にプーチンが大統領に就任したことにより、再自立を許してしまった。
(この辺りの経緯をうまくまとめているのが、北野幸伯(よしのり)氏の『プーチン最後の聖戦』(集英社インターナショナル)。ぜひお求めあれ。)
プーチンは、アメリカに対しては、ブッシュ政権の掲げる「テロとの戦い」に賛同して、一種の恭順を示しつつ、国内的には旧KGB勢力をもって新興財閥潰しに尽力する。そして、2003年10月、ロックフェラーと提携していたユダヤ系の石油王ホドルコフスキーの逮捕をもって、プーチンのロシア国富奪還作戦は一応の成功をみた。
だが、当然、その結果として彼は、西側主要各国を支配下に置く「影の政府」を本格的に敵に回してしまう。プーチンは胡錦濤政権の中国やイランと手を結んだ。
当時、イランは、イスラム革命防衛隊の総力を挙げて、アメリカのイラク占領統治を妨害していた。当たり前。なにしろ、ブッシュ政権から「次の標的はイランか、北朝鮮か」などと名指しされていたくらいである。だから、シーア派だけでなく、スンニ派や旧バース党さえ支援して、徹底的に米軍を泥沼に引きずり込んだらしい。
だから「影の政府」はロシアとイランを憎悪している。逆恨みもいいところなのだが、2017年現在も基本的に当時の流れを引き継いでいるといえる。
なぜプーチンは新生ロシアの「建国の父」なのか
さて、私は以前、ゾロアスターの秘法(Secret art of Zoroaster)が教えるところの、人間集団(国家)のもつ「72年周期」というものを紹介した。
この72年周期説は、前後数年の「あそび」と、古い周期から次の周期へと移行する間の「過渡期」という概念を想定すると、実際の歴史にかなり符合する。
ソ連の体制はだいたい72年で滅んだ。ただ、エリツィンの新生ロシアの誕生をもって新秩序へと移行したのかというと、そうとも思えない。彼の時代はあくまで過渡期(≒混乱期)と思われる。つまり、ロシアは、旧ソ連崩壊後、約8年間の過渡期を経て、2000年のプーチン政権の誕生をもって新秩序を固めたと考えるのが正解だろう。
現代ロシアは、プーチンの大統領就任と共に始まったわけだ。そういう意味で、プーチンは「21世紀ロシアの建国の父」とも言える。
対して、世界の大部分はどうか。72年周期説でいうと、大戦後に築かれた世界秩序は、今年いっぱいで終わり。来年からは、その大戦後秩序というフレームそのものが崩壊していくと考えられる。言ったように、2018年にすぐに新秩序へと移行するわけではなく、ある程度の「過渡期」を挟むことになる。おそらく、世界的に大混乱の時代だ。その中にあって、相対的にもっとも国家体制が安定しているのがロシアだろう。
プーチン再選、17年度後半から18年度にかけて西側との対立が先鋭化か
つまり、プーチンは今のロシアの事実上の建国の父だから選挙に落ちるはずがないというのが私の考え。しかも、現在は欧米からロシアへの攻撃が相次いでいる状態。これが逆に国内をナショナリズムで結束させ、プーチンの支持を挙げる効果をもたらす。
というわけで、2018年3月のロシア大統領選挙は、プーチンが高支持率のまま圧勝・再選を果たすだろうと、誰でも予測できることだが(笑)、一応は「全国一番乗り」でここに明記しておきたい。
( Vladimir Putin’s presidential inauguration ceremony in Kremlin:これを見ると、ロシアの大統領就任式は内外に向けた政治ショーだと分かる)
ところで、今年17年度の後半から大統領選挙を控える形になるプーチンとしては、対外的には妥協的な態度を取ることができない。しかも、例によって新大統領誕生の熱気が覚めたアメリカにおいてもこの時期にはいったん大統領の支持率が下がるので、やはりトランプも対外的には弱腰と取られる姿勢は取り辛い。
仮にこの時期にウクライナ東部をめぐる紛争が再激化したり、イランとイスラエルとの衝突が本格化すれば、双方一歩も引かない展開になることもありえる。
もっとも、両者が激しく睨みあう時には、逆に危機が先送りされるケースが多いし、しかも私自身、ロシアとNATOの全面対決はもう少し後だと信じている。
いずれにしても、こうして米ロの新体制が固まる。そして、第三次世界大戦があるとすれば、その後となる。
プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?
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