はい、前回の続きです。
明治25年(1892年)、京都の老女・出口ナオに「艮の金神」(うしとらのこんじん)と称する神が降りました。大本教の開教です。
「艮」と「トドメ」の意味
この「艮」は「ごん」とも読み「八卦」の一つです。
子・丑・寅・卯・辰・・・の十二支は地支(ちし)ともいい、それぞれ十二の方位を表しています。で、「艮」は、丑(うし)と寅(とら)の間にあるため、「艮=丑寅」(うしとら)とも言われるわけです。
見ての通り、「艮」は「東北」に当たります。この方角は、昔から「鬼門」といって、不幸や祟りがやって来る入口ともされる。
例えとしても、よく使われますね。私も「影の政府にとってロシアは昔から鬼門なのだ」というふうに書いたことがあります。
さらに、「艮」はまた八卦上の「艮は止なり」という意味があり、「止め(とどめ)」とも読みます。「トドメを刺す」の「とどめ」ですね。
ですから、「艮の文」(トドメノフミ)とは、「もはや絶対に覆すことのできない最終的な通告」というような意味があるのではないでしょうか。
「辛酉」(かのととり)の起源は古代中国の「讖緯説」
さて、このトドメノフミ、大本の筆先、日月神示などでは、「辛酉」(かのととり、又しんゆう)という言葉がやたらと登場します。
たとえば、日月神示は、辛酉が「こわい」と同時に「よき」とも表現する。つまり、矛盾する二面性を併せ持っている。これはどういう意味なのでしょうか。
これも根っこは八卦や十二支と同じで、古代中国から来ています。
中国の漢代に「讖緯説」(しんいせつ)という神秘思想が流行りました。
自然界と人間界とは密接な相関関係があるとして、讖(未来を予言した書)と緯(経書を神秘的に解釈した書)を中心に五行説をも併せ、自然界の現象によって人事百般を予測した。六朝時代以後は禁止。日本へは飛鳥時代ごろに伝わり、のちの陰陽道(おんみょうどう)の中に受け継がれた。
(出典:三省堂/大辞林 第三版)
なんと、かの安倍晴明の陰陽道の源流になった思想らしい。
要するに、当時の社会や文化の全域にわたる知識や教養を駆使して、自然界のサインをも参考にしつつ、政治や王朝のために未来を占った、ということでしょうか。
奇妙なことに、現代の私も、同じようなことをやっています(笑)。
で、この「讖緯説」では、辛酉にあたる年には、何らかの大きな社会的変革(革命)が起きると考えられた。これが60年に一度やってくる。
つまり、古代中国の神秘思想家たちは、人間社会を深く研究した結果、「60年のサイクルがある」と考えた。当時は、地上の統治権は「天帝の命」が下ったことにより与えられるとされた。換言すれば「60年周期」で天命があらたまる、ということ。
これが「辛酉革命」(しんゆうかくめい)の思想。日本も非常に強い影響を受けていて、「日本書紀」では神武紀元をわざわざ「辛酉の年」に定めているそうです。
日月神示などの「辛酉」(かのととり)はここから来ているんですね。そういうターニングポイントですから、「こわい」と同時に「よき」とも表現するのでしょう。
「革命改元」で密かに王朝交代の周期を乗り切ってきた為政者たち
どうやら、当時の為政者たちは「60年に一度、また天から統治者としての資格を問われることになる」というふうに、この「辛酉」年を非常に恐れたようです。当然、天帝(≒神)から「おまえアウトね」と見放されれば、王朝は交替の運命になる。
だから、「革命改元」といって、辛酉の年にわざと改元して、「お神の審査」をすり抜ける予防策が編み出され、昔から実践されてきた。
革命改元は901年(延喜1)を初例とし、室町時代に一時中断したことはあるが、幕末の1861年(文久1)まで継続して行われた。(歴史家・岡田芳朗氏)
なんと、幕末まで、日本の為政者たちはコソコソと審査対策してたんですね。
これは学者方の解説にはありませんが、たぶん「王朝を交替した」というふうに見せかけて、天を誤認させる意図なのだと思う。
実は、神秘主義では、個人の運命に関しても、似た対策法があります。
たとえば、ある時期に死ぬ運命の人がいたとする。占星術などでそれを知ったら、秘薬を飲んでわざと心臓を止め、一時的に仮死状態になる。また、外傷を負って大量出血する運命にある人ならば、自分でわざと身体のどこかを傷つけた後に輸血をする。
すると、神のスパコンは「その運命が起こった」と認識する、というわけです。で、それが二度も連続する予定になっていないから、真の危機のほうは回避される寸法です。だから、こういう秘術に通じたグループの人だけは昔から長寿が特徴です。
西洋ではこういう神秘主義を継承してきたのがカバラや錬金術です。
それはともかく、この「60年周期」には、引っかかるものがあります。
以前、ゾロアスターの「72年周期」というものを紹介しました。ちなみに、このサイクルでいえば、戦後日本は今年いっぱいでお終いと、以前に書きました。
ただし、2018年から「新しい日本」がすぐに誕生するわけではなく、新体制が固まるまでの試行錯誤の期間である「過渡期」に入るというのが私の予想です。
不可解なことに人類の時間の概念だけは「12進法」なんですね。
1分は60秒、1時間は60分、1日は24時間、1年は12ヶ月・・という具合に。だから、「60年周期」だと12の5倍、「72年周期」だと6倍になる。
古代世界における東西の大国が、似た法則性を見出したのは興味深いです。
いずれにしても、2041年が60年に一度訪れる次の「辛酉の年」です。
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