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錬金術師とフリーメイソン、そして宮廷ユダヤ人

The Double Triangle of Solomon”, Eliphas Levi’s Transcendental Magic, 1896より

フリーメイソンについて詳しく調べていくと、ヨーロッパ社会を「近代モダン」へと導いたのが彼らであることが分ります。と言っても、本来のフリーメイソンは単なる職業組合ギルドです。どうやらフリーメイソンは、17世紀半ばに「外から来たある人々」によって乗っ取られ始めたようです。それが錬金術師(アルキミスト)たちです。以下に順を追って説明します。

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古代エジプトのヘルメス哲学がルーツ

まず、西洋人の研究者があまり書きたがらないのがイスラムの影響です。

錬金術は古代エジプトにルーツを持ち、「ヘルメス哲学」とも言われます。錬金術がもっともよく保存されていた地が、古代エジプトの首都であり、世界最大の図書館のあったアレキサンドリアでした。中世を通してアレキサンドリアは常にイスラムの地でした。

中世ヨーロッパの錬金術は、このイスラム世界から入ってきました。当時、ヨーロッパよりもイスラムのほうが、はるかに文明が進んでおり、ルネッサンスもイスラム文明の影響を受けて誕生した現象でした。中世ヨーロッパにおいて最大の都市は人口50万に達したコルドバでした。レコンキスタ以前、ヨーロッパの知識人はイスラム領地であるコルドバに「留学」して、イスラムの科学・数学・天文学・医学・哲学など学びました。そのほかにも隣接するオスマン帝国から直接、イスラムの学問がヨーロッパに入ってきたと思われます。そして「先進国」であるイスラムの科学と哲学がぎっしり詰まったものこそ錬金術でした。当時は錬金術こそが最先端の学問だったのです。

イスラムの錬金術は化学と哲学の融合でした。それは物質的錬金術フィジカル・アルケミーと、哲学的錬金術フィロソフィカル・アルケミーの二つに分かれます。当時のヨーロッパの先進的な知識人は、千年以上も続いている教会の支配に次第にうんざりし、抑圧的な社会を変えたいと願うようになりました。そんな彼らが飛びついたのがイスラムから来た錬金術です。以後、錬金術はヨーロッパで独自の進化を遂げます。

中世ヨーロッパの錬金術の書物は、今でもたくさん残っています。パラケルススやロバート・フラッドといった人物がアルキミストとして有名です。書物の大半が今でいう「疑似科学」です。しかし、ヨーロッパの知識人は最終的にそれらを本物の「科学」へと昇華させることに成功しました。アカデミズムでの正統な説ではありませんが、私の考えではフィジカル・アルケミーがのちに科学と化し、フィロソフィカル・アルケミーが近代思想と化したと思います。

16世紀になると、この哲学的錬金術にユダヤ教のカバラが融合します。以後、錬金術とカバラはほとんど同義語になり、錬金術にユダヤ文化が大量に入り込みます。ここが重要です。というのも、これによってアルキミストたちはヨーロッパのユダヤ社会、とりわけカバリストと親しい関係を持つことになるからです。

18世紀のヨーロッパを席巻し、近代化させたフリーメイソン

ユダヤ社会と親しいアルキミストたちは、当時のヨーロッパの最高の知識人であり、コスモポリタンでした。彼らはイスラムとユダヤの知識を吸収したことで、従来のキリスト教世界から一歩前に飛び出すことに成功しました。彼らこそが世界最初の近代人(モダン・ピープル)だったと思います。アルキミストたちは、この世の真理を追究するうちに、次第に「社会を変えるべきだ」という政治的意志を持つようになります。

17世紀の初め頃、薔薇十字団(ローズ・クロス)がヨーロッパで広がっていきます。彼らの思想はすべて哲学的錬金術に負っていました。クリスチャン・ローゼンクロイツと薔薇十字団の話の始まりは、創作された伝説(フィクション)でした。それは半ばイタズラの混じった、今でいう「都市伝説」でしたが、あまりにも知識人の心をとらえてしまい、ヨーロッパ世界で大ブームへと発展します。新しいもの好きの知識人たちは、やがて自分たちで本当に薔薇十字団の組織を作り、錬金術にますます傾倒していきます。

17世紀半ばに、この薔薇十字団のメンバーが続々とフリーメイソンに加入します。そして内部から錬金術的組織に作り替えていきます。こうしてフリーメイソンは次第に「政治団体・秘密結社」へと変化していきます。フリーメイソンにたくさん見られる古代ユダヤや錬金術のシンボルは、すべて彼らアルキミストたちが持ち込んだものです。

なぜ彼らは、数あるギルドの中でフリーメイソンを選んだのでしょうか。たぶん、危険思想の持主として国家や教会から目を付けられるようになったので、もっとも秘密度の高い団体を選んだのかもしれません。当時はそういった活動が死刑のリスクを伴いました。だから表向きはギルドとしてエクスキューズをやる必要があったわけです。一方で、同じ頃、彼らはロンドンで世界初の自然科学の学会を設立し、近代科学の最初の芽を作ります。

いわゆる「近代フリーメイソン」の時代が18世紀初めにロンドン・グランドロッジの結成によって始まったことはよく知られています。それからわずか数十年の間に、フランス、ドイツ、その他の国々にも広まり、カトリックが敵視したにも関わらず、フリーメイソンは全ヨーロッパで熱狂的に支持されていきます。

これは一種の流行であり、「時代の空気」でした。哲学者や科学者といった当時の知識人は、進んでフリーメイソンに加入しました。時代を経るにつれ、ますます貴族の参加も増えました。明らかにフリーメイソンは、キリスト教の支配にうんざりしていた知識人や貴族の批判票的支持を集めていました。貴族にとって、時代の先端をいく組織であるフリーメイソンに加入することは、「進歩的な人物」と見なされる一種のステイタスですらあったようです。フリーメイソンは当時の啓蒙主義エンライトメントそのものでした。彼らはそれを人民主権や基本的人権といった近代的な思想へと発展させていきます。

18世紀のヨーロッパにおいて、フリーメイソンは近代化運動の先頭に立った組織か、あるいは近代化運動そのものだったと言えるでしょう。メンバーの中には、ローマカトリックと君主制(王制)に対する敵意を募らせ、旧来型の権力者に支配されない万人平等の社会を目指す者もいました。

フリーメイソンと宮廷ユダヤ人(Court Jew又はHofjuden)との関係

さて、フリーメイソンが活発に政治運動をするようになった18世紀の、その終わり頃、ロスチャイルドがヨーロッパの銀行家として急速に台頭します。果たして、両者に接点はあったのでしょうか。両者は親密な関係にあったというのが私の説です。近代フリーメイソンのルーツとなった薔薇十字団も、初代ロスチャイルドも、共にドイツで生まれました。

ちなみに、18世紀後半といえば、ちょうどドイツがフリーメイソン運動の中心地になりつつあった時期です。フリーメイソンにはキリスト教支配が嫌になった人々が集まっていたので、当然ながらユダヤ人のメンバーもたくさんいました。世界的な共同体を目指すフリーメイソンの理想は、「国家を持たないがゆえに迫害される民」であるユダヤ人にとって、大いに魅力的に映ったに違いありません。あるいは、ユダヤ人こそが近代フリーメイソンにそのような理想アイデアを吹き込んだ張本人なのかもしれません。

先ほど述べたように、アルキミストは元々ヨーロッパのユダヤ社会(とりわけカバリストのラビ)と親密な関係にありました。つまり、近代フリーメイソンが誕生する以前から、アルキミストとユダヤ人社会には接点があったのです。進歩的なユダヤ人はフリーメイソンに参加すると同時にユダヤ人だけの組織にも加入していました。うがった見方をすれば、ユダヤ組織がフリーメイソンを内部から乗っ取って革命団体に変えるためにアルキミストを送り込んだのかもしれませんが、これに関しては憶測に留まります。

周知のとおり、ユダヤ人はヨーロッパ社会の中で長年にわたって迫害されてきました。ゆえに彼らは閉鎖的で結束の強い組織を持っていました。ユダヤ人社会の有力者たちで構成された組織は、カバリスト(ユダヤ教のラビ)と金融業者の連合体でした。彼らがヨーロッパのユダヤ社会を影で率い、指導していたのです。組織の中には当然、王族・貴族に金を貸し、財政政策や金庫番などの顧問をするユダヤ人(ホフユーデン)もいました。彼らの本拠地がヨーロッパの中心に位置するドイツの自治都市(自由都市)でした。

ロスチャイルドの出現以前から、ドイツの自治都市にはユダヤ人の有力な金融業者がたくさん集まっていました。ドイツ(神聖ローマ帝国)は300くらいの小国に分かれていましたが、ほとんどの国がホフユーデンから借金し、財政や貿易の面倒を見てもらっていました。この「ホフユーデン」という人々がポイントで、私は彼らこそが近代的な資本主義を生んだと考えています。

そして、このホフユーデンの最後発として現れたのがロスチャイルドであり、フランス革命とナポレオン時代を通して急速に勃興し、1815年のウィーン体制の頃にはすでにヨーロッパ一の富豪にのし上がっていました。

ただ、今日のあらゆる陰謀がロスチャイルド家から始まったわけではなく、見てきたように彼ら以前に大きな時代の流れがあり、ロスチャイルドもまたその一部というのが正確な見方ではないでしょうか。

(以下、補足。「六茫星」は一般的にイスラエルの国旗にも記されているようにユダヤ民族を象徴する「ソロモンの紋章」Emblem of Solomonとして知られているが、錬金術的にはひとつの三角形が小宇宙(ミクロコスモス)を、そしてもうひとつのそれが大宇宙(マクロコスモス)を意味している。「小宇宙」とは「人間」のことである。セルジュ・ユタン著『錬金術』(白水社)は、大家パラケルスス(=フォン・ホーエンハイム)の思想の中心を次のように述べる。「大宇宙(マクロコスモス)と小宇宙(ミクロコスモス)、つまり世界と人間との区分で、この両者は完全に同等な二つの項を形作る。一方は他方の内部でまさに起こっていることをそのまま写し、繰り返すのである」(P70)。この「大小宇宙照応論」は後にユングの直弟子が編纂したパラケルススの『生きている遺産』や、彼の思想的後継者であるロバート・フラッドの『両宇宙誌』に余すところなく記されているが、宇宙と人間を一体視する点で、大枠では汎神論に違いない)

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