すべては「大イスラエル」のために

中東




(*これは2023.10.12にYouTubeチャンネルにアップした動画の字起こし版です。当該動画は収益化承認の妨げになっていると考えられたため、やむを得ず消去せざるを得ませんでした。それをブログで再掲しているわけです。あしからず。)

みなさん、こんにちわ。タカです。

「パート2」いきます。今回、メディアで切り取られている「目の前の出来事」だけを見ていると、

「ハマスの行為は民間人を狙い撃ちした卑怯で残虐な奇襲攻撃だ、殺されたり誘拐されたりしたイスラエル人や欧米人の被害者は本当にかわいそうだ、ハマスは悪魔のようなテロリストだ、それに対してイスラエルが自衛するのは当然の権利だ」

というふうに思えます。

実際、被害者が本当に気の毒なのは事実です。「かわいそうか、かわいそうでないか」でいえば、かわいそうに決まっています。ハマスが「残虐か、残虐でないか」でいえば、残虐に決まっています。そもそも、ハマスが軍人や軍施設ではなく非武装の民間人を襲ったのは卑劣としか言いようがない。

しかし、そこで思考停止していたら、本質を見失うのではないでしょうか。私のチャンネルを見ている人は、みんな賢い人ばかりなのでメディアに扇動されることはないと思いますが、民間人の被害に関していえば、パレスチナ人が今まで被って来た無数の被害についても取り上げないとフェアではありません。

今回のケースは、長期的な視点に立って物事を俯瞰することで、初めて本質が見えてくるものです。

ただ、一般の解説では、歴史的な視点といっても、せいぜい戦後の占領開始からです。本当はもっと前、せめてシオニズムが本格始動した19世紀半ば、さらにいえばその源泉たる旧約聖書にまで遡らないと「真の本質」を見極めるのは難しいと、私は思っています。

今回の私の動画は、そういう観点で作ったものだと、お考えください。



*大イスラエルについて

まず「大イスラエル」(The Greater Israel)という概念から説明します。

実は、ユダヤ教徒にとって、それこそが本当の「約束の地」(Promised Land)なんですね。

旧約聖書の「創世記」にこんな内容があります。

「その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで(略)土地を与える」

「わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。(略)わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える」

「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。」

はい。エジプトの川からユーフラテス川までが、本来、ユダヤ人が神から与えられた土地だというんですね。

これが大イスラエルの領域になります。

一般的によく言われている大イスラエル領

一番大事なポイントは「ユダヤ民族(の祖先)が神と契約した」ということなんです。私たち異民族からすると、古代の神話ですが、ユダヤ教徒にしてみれば、これはもう絶対的な「神との契約」なんですね。

ユダヤ人にとって、旧約聖書とユダヤ教は、宗教であると同時に民族のアイデンティティでもあります。そもそもユダヤ教は、ユダヤ人が「神から特別に選ばれた民族」であり、諸国民を従える運命を約束された、とします。

その「選民思想」が「教義」なんですよ。

「神がそう言った・そうした」という話なんですよ。そういう「信仰」なんですよ。

ちなみに、私はこういう「選民思想」は宇宙的真理に反する心の病だと考えています。

実はユダヤ教でもエッセネ派という第三派があって、そこから出て来て、そういう選民思想を排して万人への「愛」を説いたのがイエスです。

ただし、現在のキリスト教がイエスの教えの全体をちゃんと継承しているかというと、大変疑問です。

なぜなら、後のローマ勢力が、キリスト教の“正典化”過程で、エッセネ派の真に霊的な教えを排除して、それで成立したのが今に繋がる古カトリシズムだからです。

ですから、本当のイエスの教えを知るためには「グノーシス派」について理解する必要があり、そしてそうすれば、実はインド思想と同じであるということが分かります。

*真シオニズムについて

「シオン」(英語名ザイオン)はエルサレム地方の別名です。その意味では日本語の「大和」と似た言葉です。

一般に「シオニズム」とは、パレスチナ地方にユダヤ人国家を再建することです。教科書的な歴史でもそう習います。

だから、第二次大戦直後のイスラエルの建国をもってシオニズムの目的は一応達成された、と。最大限引き延ばしても、1967年の第三次中東戦争による「エルサレム旧市街の回復」をもって目的は果たしたんだと。

 

ところが、今言ったように、本来の「神との契約」からすると、「エジプトの川からユーフラテス川までが、俺たちが神から与えられている土地じゃないのか」となるわけです。

神が約束したじゃないかと。それが本来の「約束の地」(Promised Land)じゃないかと。だから「大イスラエルになるまでは神との契約が果たされたとは言えない」という思考と欲求が生じる訳ですね。

私たちが教わる歴史では、1897年に、テオドール・ヘルツルがスイスのバーゼルで第1回シオニスト会議を開催して、今につながる祖国再建運動の道を切り開いたと言われています。しかし、現在定義されるシオニズムがその時にスムーズに採択されたわけじゃなくて、実際はもっと柔軟で、様々な見解があって、複数の路線があったんですね。

表のシオニズムにすぎないバーゼル綱領

たとえば、満州に祖国を再建しようとか、あるいは中東に再建するにしても、聖書で神から約束された通りの領域にするべきだとか、いろんな主張がありました。

つまり、「大イスラエル」路線もシオニズムの最初の段階から存在していたんですね。これは今では「修正主義」と命名されていますけども、実際はこっちが本命で本音のはずです。

というか、これは私の仮説ですけども、おそらく当初、ロスチャイルド家とシオニストたちが大英帝国に対して要求したユダヤ人の土地が「ナイル川(又はスエズ運河)からユーフラテス川まで」だったと思うんですよ。でも当時のユダヤパワーはまだ不完全で、結局は、悪名高いバルフォア宣言止まりになりました。

あの宣言も元は、第一次大戦で英国の戦費を担ったライオネル・ロスチャイルド男爵に対して個人的に送られた書簡です。

だから、彼らも、とりあえず、私たちが今知るシオニズムで妥協しただけで、それゆえ「表向きシオニズム」とか「小シオニズム」というのが本当だと思うんですよ。聖書に記された通りの領土回復こそ、シオニストの元々の考えなんです。

つまり、「大イスラエル」実現こそシオニズムのゴールであり、今はその本音を裏に隠しているだけなんですね。

だから、「真のシオニズム」とは、大昔に神と交わしたそのままの契約を成就することであり、「真のシオニスト」というのは、その自己実現政策(Self fulfilling Policy)をやっている人たちなんです。

真シオニスト的には、その神との契約を実現するために、今までたくさんのユダヤ人の命という“代金”も支払ってきた。彼ら的には今さら後には引けないんです。

*大イスラエルを建国するにはどうしたらよいか?

現在、私の知る範囲では、報道にはまったく出て来ませんが、ネタニヤフ首相はこの「大イスラエル主義者」です。彼の協力者で親友のトランプもその可能性があります。しかも、彼個人の方針というより、そもそも与党「リクード」という政党自体が大イスラエル主義、すなわち「真シオニスト」集団なんですよ。

だから、ネタニヤフ政権が「大イスラエル」という「神との契約」の自己実現政策をやっていたとしても、何も不思議ではないんです。その意味では、陰謀論でもなんでもないんですよ(笑)。彼らがいったん「やる」と決めたら、どれだけ凄いか、それはイスラエルの建国のプロセスをなぞるだけで分かります。

まずパレスチナ地方にユダヤ国家を再建すると決めると、第一次大戦の戦費支援と引き換えに大英帝国に後援を約束させて、第一次大戦でオスマン帝国を負け組にして解体して、国際連盟を創設して、委任統治領という形でパレスチナ地方を分離して、ロスチャ家がどんどん土地を買い上げて、動かないアラブ人はユダヤ人テロ組織が武力で排除して、

国際的に祖国帰還運動をやって、欧州に安住している連中のケツをナチスに叩かせて、戦後は周辺アラブ諸国が一斉に襲い掛かって来たのを戦争で撃退して、1967年の第三次中東戦争ではついにエルサレムを完全奪還して・・・というふうに、もう凄まじいまでに、困難と奇跡の連続だったんですよ。

ユダヤの知略とパワーがどれだけ凄いか。

そして、シオニストが、このイスラエル建国に、どれほど勇気づけられたか、ってことなんですよ。彼らは「神の恩寵」と「人間の側の努力」が合わさった結果、この奇跡が成し遂げられたというふうに信じて、益々自分たちの正しさに自信を深めました。だから「大イスラエル」建国の自己実現政策を諦めているわけがないんですよ。

さて、ここで、現時点の話に戻ります。

ガザ地区の完全併呑など、大イスラエル建国のほんの一里塚でしかない、って分かりますよね。繰り返しますが、彼らにとって「大イスラエルを建国して諸国民を従える」までが、神との本来の約束であり契約です。

そうすると「では今のイスラエルを“大イスラエル帝国”に昇格させるためにはどうしたらいいか?」という話になりませんか? 彼らは、何もないところに、一からイスラエルを再建する、という大事業をやり遂げた集団です。だから、その目的も必ずやり遂げることができると信じている。そのためには国際社会を騙すことくらい訳はない。

あくまで私の仮説ですが、おそらく、こういう構想でしょう。

「大イスラエルを作るためには、第五次中東戦争が勃発しなければならない。そしてその戦争において、目的実現にとって最大の障害であるイランを打倒して、イスラエルが“戦勝国”として、中東の戦後秩序を自在に采配できる政治的立場を手に入れなければならない」

こうして、初めて「大イスラエル」建国が実現するわけです。それは、換言すれば「神と交わした契約がようやく成就する」という話になります。

私はこの「大イスラエル化戦略」の始まりが、今回のハマスの攻撃を発端とする戦争ではないかと、推測しているわけです。この戦争は次第にエスカレーションするように制御されるでしょう。

まだまだありますけど、「パート3」へと続きます。

ありがとうございました。

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