80年代を通して日本のバブル経済は作られ、そして末期に意図的に崩壊させられた。
その仕掛けとして、「日銀の金融政策」「外資による空売りの仕掛け」「大蔵省の銀行指導」の三つを見てきたのが、前回の記事だった。
■政治家・高級官僚、そしてメディアまでも
あえて四つ目を挙げるとすれば「政治とメディア」かもしれない。
もともと中曽根康弘氏がアメリカ側に呼応して動いていた(ないし動かされていた)わけだが、その後釜がとんでもなく無能続きだったことが、日本経済の出血を拡大した。
- 第74代 竹下登(1987年11月~1989年6月)
- 第75代 宇野宗佑(1989年6月~1989年8月)
- 第76代 海部俊樹(第1次:1989年8月~1990年2月)
- 第77代 海部俊樹(第2次:1990年2月~1991年11月)
- 第78代 宮澤喜一(1991年11月~1993年8月)
これも偶然なのか意図的なのか分からないが、この四人は明らかに戦後もっとも無能な総理大臣であり、何の指導力も発揮しなかった。海部総理時代の大蔵大臣は橋本龍太郎だが、金融の素人であり、大蔵省銀行局のおかしな通達をそのまま許した。
他方、政治の危機対処能力の無さを指弾した大手メディアもバブル経済の勃興と崩壊の責任から免れることはできなかった。たとえば、主要新聞社自体、不動産業を営んでいたので、土地高騰の受益者であった。テレビ局にいたっては、高級クラブや大型ディスコでの乱痴気騒ぎを過度に取り上げ、ドラマやバラエティでバブリーな演出をするなど、バブル的な社会風潮を煽った張本人であった。そんな彼らが1990年を境にして、今度は一転して銀行を目の仇にし、政府の対応を非難し、バブル退治に尽力した。
こうした「四重苦」によって、バブル経済は突如として瓦解し、以後、日本経済は長期の景気後退へと突入したのだ。ある意味、その迷走は今日まで続いている。
対して、責任者たちは栄転を続けた。中曽根康弘は大勲位となり、その後も長らく議員を務め、現在でも健在だ。橋本龍太郎は後に総理大臣に上り詰めた。その橋本大臣下で、銀行に対して「不動産総量規制」を通達した当時銀行局長の土田正顕(つちだまさあき)は、国民金融公庫副総裁を経て、東証理事長(民営化後は社長)に就任した。
中曽根の次に注目すべき人物は84年から89年末まで日銀総裁を務めた澄田智(すみださとし)である。プラザ合意や低金利政策など、「彼ら」の思惑通りの政策を推進し、空前のバブル経済を作り上げた直接的な責任者ともいえる澄田は、総裁退任後、ラザール・フレールの顧問に就任した。同社はフランス・ロスチャイルドの銀行であり、NY連銀の株主企業の一つである。つまり、米FRBのオーナー企業だ。「なぜ仏ロス?」なのかというと、もともと明治時代に日本銀行自体が彼らの協力で作られたからである。
■1500兆円の国富消失と630兆円の新たな借金
さて、バブル崩壊で日本の企業と個人が失った株・土地資産の合計は約1500兆円と言われている。だが、非情にも、実は同じ時期に日本弱体化の罠がもう一つ仕掛けられていた。それが1989年2月にNY連銀の会議室において始まり、1990年6月に最終報告がまとめられた「日米構造協議」(を通した要求)である。
例によって日米の貿易不均衡を是正するという名目で、アメリカ側が日本にあれこれと勝手な要求を飲ませる代物だが、最大の特徴は日本に巨額の公共投資を強いる点だった。海部内閣はこれを飲み、10年間で430兆円の公共投資計画を策定した。
しかも、後に、やはりアメリカ側の要求により、村山内閣時代に200兆円が積み増しされた。つまり、総額630兆円という空前の公共事業計画である。
原資は主として特別会計の財政投融資が当てられた。端的に言えば、債権を発行して回収しなければならない金(つまり未来からの借金)だ。もっとも、仮に単年度使いきりの公共事業費を当てたとしても、その原資の3割は、今ではやはり国債なのだが。
こういった公共事業は、ご多聞にもれず費用対効果が低い。元請のゼネコンはどんどん下請けに投げていくし、しかもイノベーションを促すこともほとんどない。
さらに、今では周知のこととなったが、この日米構造協議は、1993年に「日米包括経済協議」へと発展し、「年次改革要望書」なる“対日指令書”の発信源となる。
ところで、海部内閣がこのような公共投資計画を米側に約束したわけだが、本当は「神輿は軽くてパーがいい」と評してその海部氏を総理に擁立したキングメーカーの金丸信と小沢一郎が黒幕だと言われている。一説によると、430兆円という金額までこの二人が決めたという。実は、金丸と小沢はゼネコンからの裏金を自らの収入源としていた。米側もその日本の政治腐敗を利用できると考えて、この二人を交渉相手としたのだろう。
■第二の敗戦――そして日本は二度と立ち上がれなくなった
かくして、日本はバブル崩壊によって1500兆円もの資産を失っただけでなく、それと平行して、630兆円もの未来への借金を背負わされたのである。
対して、未来の世代に膨大な借金を背負わせた小沢は、自分だけは建設会社から献金を貰い続け、政治団体名義で各地の不動産を買い漁り、実質富豪へと登りつめた。
これほど短期間に、これだけの富を一国から奪い、かつこれだけ巨額のばら撒きを強いた例は、歴史的にも珍しい。しかも、やられたほうはそのことに気づいていないし、相手を友人とすら信じているのだから、皮肉ではないし、これは史上最大の詐欺の成功例と言えるかもしれない。おそらく、帝国主義や植民地支配が無くなったというのは私たちの勘違いで、それは形を変えて未だに存在しているのだろう。それは潜伏し、手口がより巧妙化したため、存在している実態が分かり辛くなっただけだ。
たしかに、それでも日本経済はなんとか恐慌入りを防いだ。それは毎年、黒字を生み出す力があったからであり、勤労者全体が平均所得を漸減していったからである。しかし、どのような強力な国家でさえ、こんな目に合えば無事ではすまない。
戦略面でいえば、これで戦後日本の運命は決したのだ。いくら細かな戦術的勝利(たとえばトヨタが世界一の自動車会社になるなど)を重ねても、将来の衰退は免れない。
■これは巨大な陰謀である。そして犯人は・・!?
なぜバブル経済が産まれ、膨張し、突然破裂したのか? なぜアメリカは金融市場の開放と、巨額の公共投資の実施を、執拗に日本にごり押ししたのか? ちなみに、1929年の大恐慌へと至るFRBの金融政策と、日本のバブル崩壊へと至る日銀のそれは、非常によく似ている。アメリカは自身の経験を忘れて日本に利下げを要求したのだろうか。
これらの疑問を解明するためには「常識に捕らわれないこと」と「巨視的な視点」の二つが不可欠だ。その柔軟で大きな思考のモノサシを使えば、これが用意周到に準備された罠だったことが見えてくる。異常なほど巧妙なのは、一切が「合法的」であることだ。しかも、十年がかり、もしくはそれ以上の、長期にわたる計略だ。
つまり、本質的には陰謀である。しかし、あまりにスケールが大きすぎると、「絵」を理解することが難しくなる。「陰謀論に陥るのは知的弱者だ」という“良識”も理解の妨げになる。だが、陰謀論を十把ひとからげにするのもまた偏見のなせる技である。
ある種の色眼鏡をかけると、なんでも「ユダヤの陰謀」に見える。一方で、別の色眼鏡をかけると、なんでも「陰謀論」とか「陰謀論者」に見える。両者は似た者同士だ。
自らを知的強者と信じる“良識派”は、従来「ロックフェラーがアメリカの国益に反してワンワールドを作ろうとしている」という主張を指して、「頭の弱いアメリカ右翼の妄想」と斬り捨てていた。ところが、デヴィッド・ロックフェラーは2003年の回顧録の中で、まさにそのことを誇らしげに告白した。
また、「ロシア革命はユダヤ勢力によって行われた」という主張は、昔からユダヤ陰謀論の代表的言説の一つだった。ところが、2013年、プーチン大統領は居並ぶユダヤ人たちの前で、「最初のソ連政府メンバーの80~85%はユダヤ人だった」と言ってのけた。プーチンは“陰謀論者”なのだろうか。
これらのことはいずれまた詳しく説明するが、要は従来、陰謀論だったことが後に事実と判明することもあるわけだ。つまり、巨大な陰謀の実在はファクトなのだ。
だから、「レーガン政権がスタートするころには、この作戦に着手する準備は整っていた」というあるユダヤ人ジャーナリストの告発(以下記事)も、安易に陰謀論と切り捨てるべきではない。
ただし、犯人として米政府を挙げることは間違ってはいないが、正確ともいえない。たしかに、表面的には米政府が日本に圧力をかけているわけだが、彼らは背後から操られているにすぎない。真犯人はまったくの「超国家勢力」である。英米もまたずっとこの連中に寄生され、搾取され続けてきた。普通の英米人もまた歴史的に「刈り取り」の対象にされてきた被害者であり、その最悪のケースが1929年の大恐慌である。
むろん、一般のユダヤ人も何の関係もない。むしろ、普通のユダヤ人に対するヘイト行為は、結果的に政治利用され、ますます超国家勢力を利するだけである。
しかも、それは単なる金儲けだけが目的ではなかった。「あらゆる主権国家の力を弱める」という戦略の一環である。何のために? 将来的に世界政府に吸収して従属させるためだ。彼らにとって強力な民族国家の存在そのものが計画の大きな障害なのだ。
だから、それは「刈り取り」と「国家弱体化」という一石二鳥を狙った計画だったのだ。
■真の目的は金儲けではなく、世界を支配すること
彼らは「世界を一つの大きな国家にまとめ上げる」という目的のために、様々な戦略を実施している。たとえば、自由貿易の推進による相互依存の深化はその一つだ。表の目的は世界経済の分業最適化だが、裏目的は一国が自立して生きていけないようにすることだ。民主化・民営化の推進も、国家権力を制限する裏目的がある。グローバル化を推進し、人・モノ・金が活発に国境を行き交い、世界経済を一体化させることも同じ。表向きは素晴らしい理想が謳われても、裏には常に「統治」という政治的な目的がある。
そうやって国家の力を弱め、いずれは世界政府が国家から主権を取り上げて、地上の最高政体として君臨する。その時、現行の「見えざる政府」がそのまま「世界政府」へとスライドし、表の世界へと姿を現す・・・どうやらそういうシナリオらしい。問題はそれがユートピアではなく、どうやらディストピアらしいということだ。
ただし、その目標を達成するためには、まだまだ克服せねばならぬ課題や障壁が山積している。というのも、「見えざる政府」は決して世界全体を支配しているわけではない。最大の抵抗勢力がプーチン・ロシアである。「見えざる政府」はエリツィン時代にロシア経済を植民地にすることにいったん成功したが、2000年に大統領に就任したプーチンの反撃に合い、ロシアの再自立を許してしまった。実は他にも数種類の理由があるが、それで2015~6年頃にかけてNWOを実現するという当初の計画が狂ってしまったのだ。
どうやら2005年頃に計画の修正が行われたようだ。内容は私も知らないが、おそらく目標達成は十年ほど先延ばしにし、より急進的な手段をとる、といったところだと想像される。換言すれば、ロシアとその追随国を従えるためには大戦も辞さない方針だ。
■彼らの最終目的を達成するために最後の世界恐慌が引き起こされる!
実は今回、あえて四半世紀も前の日本のバブル崩壊の事例を持ち出した理由は、あたかもそれを「移写拡大」した格好で、今度は西側世界全体を対象にして実施されるのではないかという予感がするからだ。むろん新興国にも連鎖するので、世界恐慌である。
リーマンショック以降、日米欧当局はどんどん政策金利を下げてきた。今ではいずれも金利が1%以下という、史上類を見ない超低金利・金融緩和政策が行われている。機関投資家やファンドはそうやって低金利で調達した膨大な資金を債券市場などに突っ込んでいる。そのデリバティブ取引の総額は実体経済の数十倍という物凄い規模である。
何かに似ていないだろうか。そう、80年代の日本である。だから、意図的に崩壊させるとすれば、それは2008年のリーマンショックから十年前後――つまり2017~19年――が目処のはずだ。しかも、日本のバブル経済の何十倍もの巨大な膨張である。だから今度は日本のバブル崩壊どころではない、史上空前の破裂になるだろう。当然、世界のマネーが大きく米国債やNY株に依存しているので、最悪の暴落はNY市場で起こる。
呆れたことに、さる16年8月、ジェイコブ・ロスチャイルド卿が自身の基金のメンバーに向けて次のような書簡を送ったそうだ。
「すでにここ数年、人類は、世界の中央銀行が行っているグローバルな金融上の実験という条件下で暮らしている。中央銀行は『空中から』記録的な量の紙幣を印刷し、歴史上最低レベルまで金利を下げた。(略)世界の歴史上、文字通り最大のマネタリー実験を続けている。それがどんな結果をもたらすかは、予見不可能だ」
(出典:https://jp.sputniknews.com/business/20160817/2652664.html)
事情通の人なら、これは「彼ら」がしばしばやる「事前通告」だと感づいたかもしれない。ロスチャイルド卿は第三者のふりをして言っているが、各国の中央銀行の中央銀行たるスイスのBIS(国際決済銀行)を支配しているのは当のロスチャイルドである。
もっと事情通の人は、1929年のNY市場大暴落の少し前にも、ポール・ウォーバーグが株式市場の加熱にわざわざ警鐘を鳴らした事実を想起するかもしれない。その後、FRBの政策金利を急激に釣り上げて市場を潰したのは、当のウォーバーグだった。
日本の事例の分析では、三つの崩壊原因を挙げた。1929年のNY株暴落では、突然の金融引き締め政策が原因となった。他にも米国債の暴落、ドイツ銀行の破綻、関東大震災などが「金利の上昇⇔債券市場の崩壊」のきっかけとなりうる。だが、その目的の第一は、対日ケースと同じ様に「見えざる政府」による「刈り取り」と考えるべきだ。
つまり、まず天井からの空売り攻勢で儲け、底に達したところで、今度は先進国・新興国問わず、自分たちに属さない大企業や優良企業の株を買占めにかかる。
第二に、そうやって社会を混乱に陥れることで、人々に現行の世界経済のシステムに疑念を抱かせ、新しい安定したシステムへのチェンジを渇望させる。
第三に、人々を戦争へと駆り立てる。幸福で満ち足りている時には誰も戦争をやりたいとは思わない。戦時体制下に組み込んでいくためには大規模な失業状態を作り出すことが手っ取り早い。またインフレ下だからこそ、エキセントリックな政権が誕生する。
こういった目的を実現するため、世界恐慌は予定されている。日本のケースと同様、今回も十年がかりの用意周到な計略である。彼らは大衆操作の天才だ。不況時における私たちの怒りでさえも計算に入れ、利用対象とする術を持っている。具体的には、私たちは、私たち自身の政府と“見える富裕層”に対して攻撃の矛先を向けるだろう。
そして、これらの世界的大問題のソルーション(解決策)として、グローバル・ガバナンスのシステム(つまりNWO)が提示され、導入されることになるのだ。
2016年11月27日「トカナ」掲載
(*題名・見出し等は少し変更してあります)
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