私は、中曽根康弘氏が議員に当選して早くも一、二年目の頃には、将来の日本のリーダーとなるべく、世界支配層によって目をかけられたと述べてきました。
古くは麻薬商人ジャーディン・マセソン商会が関わった伊藤博文ら「長州ファイブ」の例もある。その後ですが、イギリスは、下関戦争で、かえって敵側の長州藩の勇敢さと戦後の交渉術に印象付けられたんですね。類似の例として、薩英戦争も挙げられます。
19世紀半ばにおけるイギリスの最大の仮想敵国は帝政ロシアでした。イギリスは、本国は小さいが、海外に広大な植民地を幾つも所有する「海洋植民地帝国」です。
つまり、大英帝国の覇権は「制海権」によって支えられていた。そこへ、ロマノフ朝ロシアが外洋への進出を企てた。その西側の出口が「黒海」。ロシアが今もクリミア半島の領有に固執する理由が分かります。他方、東側の出口が「朝鮮半島」です。
不凍港でなければ海軍基地としてのポテンシャルを十分に生かせないんですね。事実、ロシアは20世紀の初めには清から満州をとり、次に朝鮮に狙いを定めました。
この同じ光景を見ながら、日本はロシアを撃退することを考え、朝鮮は逆にロシアに従属することを考えました。正確にいえば、ロシア脅威論を訴える朝鮮独立派は、高宗とその取り巻きによって1898年末までに壊滅させられました。高宗たちは自国の様々な権益を欧米列強に売り飛ばして現金化し、贅沢しました。その上、日露戦争を傍観したので、日本はいったん下関条約で朝鮮に与えた独立を取り上げました。
韓国の歴史教育では、この一連のプロセスを黙殺し、結果である「独立を取り上げた」という点だけを強調して、権益セールスも「侵奪」などと書き換えています。
たとえ恥ずべき過去でも韓国は直視しなければなりません。話を戻します。
一方、幕末の時点で、日本の仮想敵国はすでにロシアでした。北海道や対馬に侵入して乱暴狼藉を繰り返していたので、早い段階から仮想敵国との認識がありました。
ここに、ロシアの外洋進出を食い止めたい大英帝国と、日本の利害とが一致した。
しかし、その前に、日本はまず近代的な国民国家へと変貌する必要があった。だから、イギリスの最初の仕事は、その手助けをすることでした。
ただ、しばしば誤解がありますが、明治日本は大英帝国の属国ではありません。
なぜなら、薩長軍の倒幕資金を支えたのが、基本的に住友や三井などの民族資本だったからです。まあ当時は豪商ですが。それに日本は仏独とも関係を持ってバランスを取った。また、鉄鋼業・石炭業・造船・鉄道を学び、自力で運営できるようにした。
だから、彼我の実力差が大きくとも、明治日本は大英帝国の手下ではなく、あくまでもパートナーという位置づけでした。日本が本格的に西洋国家の従属下に置かれたのは第二次大戦後が初めてです。ここを間違えてはいけません。
「自分たちが一から育てた現地人リーダー」こそ支配者側の理想
で、元に戻りますが、その属国において、将来の指導者として半育成されたのが若き中曽根康弘だったわけですね。それ以前の吉田茂や岸信介は、戦前下の日本で既に出来上がった人物であり、あくまで戦後に占領政策に協力しただけです。
中曽根康弘氏でさえ軍国日本が生んだ人物です。世界支配層に引き抜かれたのが政治家のキャリアの初期だったので、それゆえ「半育成」と呼ばざるをえない。
やはり、世界支配層にとって理想的なのは「自分たちが一から育てた現地人リーダー」です。具体的には、戦後教育を受けて欧米に留学した経験のある日本人の政治家です。
それくらい自分たちのカラーに染まった人間でないと、彼らは根っから日本人を信用しない。とにかく自分たちと同じ価値観でないと、彼らは物凄く嫌がる。
マッカーサーが日本の土を踏んで真っ先にしたことはフリーメイソン支部を作ることでした。私は陰謀論者ですが、この事実は、それほど勘ぐる必要はない。フリーメイソン思想は近代欧米の価値観そのものですから、マッカーサーは「軍国主義の狂信者のジャップ」を人格矯正するには価値観から教えていく必要があると考えたのでしょう。
そういう意味で、安倍さんなんかは絶対に彼らから「仲間」とは見なされない。留学というより遊学だったし、欧米の大家に弟子入りしなかったし、伝統的な日本の価値観を引きずっているので、「原住民色」が抜け切れていない人物と見下されている。
対して、おそらく、欧米流に洗練された、完全に近代人化された人物というふうに世界支配層から見なされ、信頼されているのが「小泉進次郎」です。
ある意味、彼は世界支配層にとって理想的な日本人です。戦後教育から始まって、欧米の一流大学院できっちりと勉強して、シンクタンクを経由して議員になった。
まさに、彼らが日本を占領して以来、ずっと待ち望んできた「現地人リーダー」です。
これまで、この種の、生まれつきのバナナ日本人が総理大臣になった例はなかった。だから、進次郎がなれば最初であり、大変画期的なことです。
むろん、彼らにとって。
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