さて、後半が長くなってしまったので、さらに二つに分ける。
「影の政府」はソ連を崩壊させるだけでなく、調子に乗っている日本にキツイお灸を据える計画をも同時に進めていた。それは莫大な日本人の資産を合法的に奪い、欧米特権層へと移転させるもので、アメリカの軍拡の穴埋めになっただけでなく、おそらくは1990年代後半のクリントン時代の空前の経済繁栄の要因にもなったと思われる。
【参考記事:日本のバブル経済を作り崩壊させた国際銀行家たちの巧妙な陰謀】
表の政治家をしていた「影の政府」のメンバー、それが大ブッシュ
さて、冷戦終結が確定した頃、非常に興味深いことが起こった。
それは、元CIA長官でレーガン時代は副大統領だったジョージ・ウォーカー・ブッシュが大統領に選ばれたことである。時々の米大統領は「影の政府」の政策の反映でもある。だから、見る人が見ればこれは“メッセージ”だ。
ブッシュは、俳優のレーガンや、その前任者のピーナッツ農場主カーター、またその政治的後継者である田舎の知事一筋だったクリントンとは毛並みの違う人物である。
ブッシュ家は「北米貴族」の一員だ。イギリスとパートナー関係を結んで奴隷貿易やアヘン貿易で名門になった者たちである。先祖は英王室に連なるらしい。
つまり、父ブッシュは世界支配層の内輪メンバーだったのである。
かつて、ジミー・カーター大統領が「エリア51を見学したい」と頼むと、CIA長官だった彼から「残念ですが、大統領にはその権限がありません」と、にべも無く拒絶されたという逸話が残っている。本当か否かは分からないが、さもありなん話だ。
要するに、リアル支配層のメンバーが米大統領に就任したということだ。
父ブッシュの“偉業”として知られているのが「湾岸戦争」の勝利である。
1990年8月、イラクが隣国クウェートを侵略した。この際に、アメリカがいかにしてサダム・フセインを罠に嵌めたは、趣旨ではないために省く。
当時、国連安保理の常任理事国だったソ連と中国がどれほど惨めな状況にあったかは記すまでもない。アメリカは堂々、安保理決議を経て対イラク戦争を始めた。
米軍の最新誘導兵器が標的に命中する様子がビデオ録画されてメディアに公開され、湾岸戦争は世界初の本格的な「ハイテク戦争」と呼ばれた。結果は多国籍軍(事実上米軍)が圧勝し、ブッシュ大統領の支持率は約9割に達した。
大ブッシュは、ポスト冷戦時代のあるべき姿として「NWO:新世界秩序」という用語を繰り返し公言した。まず彼は、1990年9月11日、『Toward a New World Order』(新世界秩序へ向かって)と題した演説を連邦議会で行った。それから約半年後に行った議会演説では、ウィンストン・チャーチルの言葉として、また国連創設者が望んだ体制として、もっと露骨かつ執拗に「New World Order」という用語を繰り返した。
それは「影の政府」の“狼煙”でもあったと思われる。
われわれはこれから「新世界秩序」を創るぞ、という。
そして、そのために不可欠なのが「すべての独裁国家の打倒」と「米一極支配体制の構築」であった。
この記事では前者の目標について述べていく。
ポスト冷戦時代の新戦略――なぜ独裁国家は打倒されるのか?
では、なぜ独裁国家を打倒して「民主化」しなければならないのだろうか。
その理由は、主権国家を、「影の政府」又将来の「世界政府」の支配下に置くためには必要不可欠な措置だからである。独裁者や独裁政権とは、その国の国家資産や国民を私物化するものだ。それが「影の政府」の世界支配にとって大きな障害なのである。
対して、民主的な政府ならば、いかようにもコントロールが可能になる。たとえば、民主政における大統領や首相ならば、選挙の洗礼を受けねばならず、憲法でも任期が規定されている。「影の政府」がマスコミを使って世論誘導することも可能だし、彼を引き摺り下ろしたくなればバッシングすればいい。まだ若い時期から取り込んで「育て」たり、利権や賄賂を使って「縛り」をかけたりすることもできる。そうすれば裏切ることはないし、万一、裏切ったとしても政治的に排除・暗殺すればいいだけだ。
たしかに、「悪の親玉」たるソ連打倒を最優先としていた時期には、アメリカは平気で独裁政権や独裁国家とも手を結んだ。なにしろ、CIA自ら反共独裁政権の成立を工作してきたくらいである。日本の自民党及び五五体制もそうやって築かれたものだ。
しかし、それはあくまで最強最悪の敵を打倒するまでの暫定措置にすぎない。
「影の政府」の究極の目標は「世界政府」を創設し、人類を統一することだ。逆にいえば、地球上のすべての国家は主権を献上しなければならない。その大事業において、国家を私物化する独裁政権だの独裁国家だのといった存在は、もってのほかである。
だから、ソ連の破綻以降、彼らはたちまち本来の路線に復帰した。
それまでアメリカが仲良くしてきたサダム・フセインも、パナマのノリエガも、突如として邪魔者へと早変わりした。だから、彼らは消されることになった。
「影の政府」がもっとも警戒し敵視する国家とは?
アメリカが何のために他国の“民主化”をやっているのか、もうお分かりだろう。要するに、それが「影の政府」の本来の路線であり、冷戦後の方針だからだ。
それゆえ、彼らはアメリカを動かして“世界の民主化”を進めているのである。
要は、「影の政府」にしてみたら、そんな存在を許したら、おれたちがその国とその市民を支配できないじゃないかという、傲慢かつ身勝手な話なのである。
許されるのは、サウド家のサウジアラビアやナザルバエフのカザフスタンのように「影の政府」とパートナー関係を結んだ存在だけだ。この二国家は極めて専制的で抑圧的な政治体制だが、西側メディアははるかに民主的なイランを叩くことに夢中だ。
21世紀に入ると、東欧では「カラー革命」、中東から北アフリカでは「アラブの春」といった“独裁政権”打倒の政治運動が相次いだ。背後にいるのは、米国務省、CIA、USAID(合衆国国際開発庁)、ソロスのオープン・ソサエティ財団などだ。
彼らはその国の内部対立や政治的不公平を利用することにかけては天才である。とくに独裁国家には政権から抑圧されている民族や宗派が存在することが多い。彼らを炊きつけ、外に対しては彼らの悲劇を喧伝する。こうして内外から揺さぶりをかける。
ところで、「影の政府」にとって、独裁国家同様、もしくはそれ以上に邪魔な国家がある。それが「民族主義で団結した国家」である。その種の大国をとくに危険視する。
中小の独裁国家より、こっちのほうが厄介な存在である。なぜなら、民族主義的な大国こそ、「影の政府」の未だ不完全な支配体制を真に揺るがしかねないからだ。
むろん、これはナチスドイツと日本帝国がかつて欧米秩序に挑戦し、部分的には危うかったという歴史的経験に根ざすところが大きい。
「影の政府」は戦後、日独を事実上の従属下に置き、対共産圏における前線基地としたが、根っこでは信用していない。未だにナチズムと日本軍国主義の亡霊を恐れ、嫌悪している。だから、この二つが少しでも顔を覗かすと、徹底的に攻撃する。
民族主義化(右傾化)を防止する装置がメディアだ。彼らはいわゆる左翼的・国際主義的な価値観で大衆を啓蒙し、逆に狭量な民族主義を戒める責務を負っている。
だから、西側の大手メディアがその国の政府を監視し、時にはバッシングすることを“民主的・進歩的で成熟の証”と自負していることは偶然ではない。日本のメディア人が「メディアの役割は国家権力の監視」というのは、世界権力の犬として模範解答だ。
ただし、彼らはそれが正しいと信じているのであり、外部によって植え付けられた価値観だとは自覚していない。つまり、自分が世界権力の犬だとは気づいていない。
彼らは国家権力を叩くが、世界権力=超国家勢力の存在は「陰謀論」と片付ける。それが学問的に正しく、また知的エリートとして正しい態度だと信じている。
彼らは、事実愚劣な陰謀論は、陰謀論が愚かである証拠として好んで取り上げるが、ファクトに裏付けられた陰謀論は黙殺する。自分がこれまで信じてきたことが実は偏見であり宗教であるかもしれないという疑念を生じさせるからだ。ましてや外部から植え付けられた価値観などと! 誰しも信念体系と自己を同一視しているから、その過ちを認めることはこれまでの自己の否定であり、崩壊であり、これほど恐ろしいことはない。
ところで、現代において、まさに「民族主義的な大国」が二つ存在している事実は言うまでもない。中ロである。「影の政府」は今の中ロの国家権力を絶対に許さない。
だから、戦争で中ロを打倒し、その戦後秩序として「新世界秩序:ニュー・ワールド・オーダー」を構築するという計画が地下で進行していたとしても驚くに値しない。
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