前回、「9・11同時多発テロ」の隠された6つの大目的について述べた。
むろん、細かく言えば、ビジネス上の動機から手っ取り早くツインタワーを取り壊したかったとか、そこのフロアにある「何か」の機密を消去したかったとか、いろいろあるに違いない。いずれにせよ、一石七鳥あるいは八鳥もの一大謀略だったと思われる。
それで世界支配層のメンバーは、ワクワクするあまり、1990年代のハリウッド映画の中に繰り返し“サイン”を入れるような真似をしたのではないだろうか。
だが、この一大謀略は結果的に失敗に終わった。もしくは大幅な軌道修正を強いられた。その大きな理由がプーチンの反撃である。これは「影の政府」の想定外だった。
この記事はそれについて述べる。
なぜ故デヴィット・ロックフェラーは回顧録で秘密をバラしたのか?
2017年に死去したデヴィット・ロックフェラーは、テロ直後の産物と言える回顧録において、奇妙なほど雄弁だった。
2003年に上梓した『ロックフェラー回顧録』(David Rockefeller memoirs)において、彼は要約するならば次のような文章を書いて物議をかもした。
イデオロギー的極論者は、私の一族と私のことを、ワンワールド(one world)を作ろうとしている“国際主義者”(internationalists)などと批判してきたが、それが容疑(charge)ならば私は有罪に立つのであり、又それを誇りとする(proud of it)。
要するに、長年、彼に対して掛けられていた「嫌疑」を素直に認めたのだ。それは今まで正統なジャーナリズムやアカデミズムから「陰謀論」として片付けられていたものだ。
ロックフェラーが回顧録の執筆を始めた正確な時期は知る由もないが、原稿の完成が「9・11」謀略の成功を見届けた後である事実は間違いない。
いったい、彼がこの時期に“長年の秘密”を明かした理由は何だろうか。
やはり当時の時代背景を考慮すべきだ。おそらく、彼は「9・11」謀略の成功を確信して、このまま真っ直ぐに「ワンワールド」が実現するだろうと信じきっていたのではないか。だから、回顧録でそろそろ「自分たちはワンワールド主義者だ」という一族の本性をバラして大衆が少々騒いだところで大丈夫だと、タカをくくったのだ。
だいたい、崩壊したツインタワー後に建設されたのが「ワンワールドトレードセンター」(One World Trade Center)なのだから、まったく人(大衆)を食っている。
「当初の名称はフリーダムタワー(Freedom Tower)であり、それは変更されたものだ」と反論する者もいるが、それこそ見え透いたカモフラージュである。
WTCの変遷に隠されたヘーゲル哲学的サインとは?
あるいは・・・これは「影の政府」が好む象徴主義なのかもしれない。
下の記事でも述べたが、彼らの元々の構想は、世界を二大勢力に二分し、その両極対立構造の中から大統一を模索するというものである。
ヘーゲルの弁証法(dialectic)の本質は、あるテーゼ(正)とアンチテーゼ(反)の対立を昇華して、両者を統合したジンテーゼ(合)へと導くことである。
そうすると、元のWTCの双子ビルは冷戦中の二大勢力を暗示していたのではないか。それが崩壊した後に、一つのビルが建った。しかも、当初の名称は「フリーダムタワー」である。これはつまり、冷戦の崩壊と自由主義陣営の勝利を意味していないか。
それがしばらくして「ワンワールド」というビル名に変化するということは、その体制がそのまま「ワンワールド」へと進化していくことを意味している。
もしかすると、「影の政府」は、「9・11テロ」によるWTCの崩壊とその再建に、インナーサークルだけが知る、ヘーゲル哲学的な象徴主義を込めたのかもしれない。
勝者の驕りとプーチン・ロシアの反撃、そして中ロの実質同盟
いずれにせよ、世界支配層は、「9・11テロ」後に世界がいったん「米一極支配体制」へと移行し、それがそのまま地球的管理社会(=NWO)へとスライドしていくと信じていた。彼らの計画のままに・・。
しかし、作用があれば必ず反作用があるのが自然の摂理である。
その最たるものが「プーチンの乱」だ。これは彼らにとって想定外だった。
話は少し遡る。「スターリンの裏切り」によってソ連が世界支配層の統制を外れたことは前述した。そのソ連も89年のベルリンの壁の崩壊を経て、91年末には崩壊した。
その後、独立国家共同体においてロシアを率いたのがエリツィンである。このアル中大統領の時代に、石油や天然ガスをはじめとするロシアの国富は、次々と欧米資本が裏で糸を引くオリガルヒの手に落ちた。1997年にはロシアは借金のあまりIMF“金融進駐軍”の前に陥落した。ロシアは実質、国際銀行家の経済植民地と化した。
その時期にエリツィンとオリガルヒの間を巧妙に渡って、2000年、第二代ロシア大統領に就任したのが、元KGBのウラジーミル・プーチンである。
この時期に世界支配層の息のかかっていない者がロシアの指導者になれるとは思えないので、ある意味、彼もまた「裏切った」人間だ。むろん、影の政府を。
プーチンは就任後、猛烈にオリガルヒからロシア国富を奪還し始めた。その一応の決着がついたのが、最強の石油財閥ホドルコフスキーに対して勝利した2003年だ。
私たちは、「影の政府」にとってロシアの位置づけとは何かを知る必要がある。
かつて「影の政府」のワイズマンであるマッキンダーは言った。
「ユーラシア大陸の中心たるハートランドを押さえたものが世界を制する」と。
つまり、彼らにとって、ロシアを従えない限り、世界の統一も支配もない。だが、一方でまた彼らがどうしてもハンドルできなかった大国がロシアでもある。
なぜなら、帝政ロシアが専制政治の国であり、西ヨーロッパを覆った民主化の嵐から、自身を頑として守り抜いてきたからだ。これが今日の価値観で良いか悪いかはまた別。
ただ、事実として、その「おかげ」で、ロマノフ朝は政治と軍隊からほぼ完全にユダヤ人を排除し、彼らの政治的・商業的活動を監視下に置くことができた。
帝政ロシアは「キリスト教国家」「専制国家」「ユダヤ人迫害国家」「大英帝国の覇権を脅かす国家」として、三重四重にも憎まれていた。逆にいえば、その鉄壁を崩したロシア革命が、世界支配層にとってどれほど重要な歴史的イベントであったかということだ。
その「ロシア革命」という一大謀略の成果を、スターリンが台無しにした。そして、「冷戦の勝利」という成果を、今またプーチンという男が台無しにしてしまった。
もちろん、これはロシアの視点で見れば、ロマノフ朝皇帝、スターリン、プーチンという“独裁者”のおかげで、「影の政府」の支配を免れてきたことを意味する。
しかも、同じ2003年、中国で胡錦濤政権が誕生した。彼は当初、江沢民の強い影響力に苦慮しながらもある重要な決断を下した。それがロシアとの実質同盟である。
この「実質中ロ同盟」がはっきり姿を現したのが2005年である。この時代から「新冷戦」が始まり、米ペンタゴンはその翌年に中国を仮想敵国に正式認定した。
「影の政府」は恐るべき軌道修正の決断を下した
さて、「米一極支配体制からワンワールドへ」という世界支配層のプランに誤算が生じた第一の理由を、以上のプーチン・ロシアの反撃と、つづく実質中ロ同盟の締結に求めるならば、第二の理由は明らかに彼ら自身のミスである。
それがブッシュ政権によるイラクの占領統治の「泥沼化→失敗」だ。
この二つは明らかに関連している。当時のブッシュ政権では、計画失敗の責任を負う形でネオコン派が次々とパージされ、代わってコンドリーザ・ライスなどの伝統的な国務省派が外交の主導権を取り戻しつつあった。
プーチンと胡錦濤は、まさにそのアメリカ政治の混乱の間隙を縫って、互いに実質同盟の締結に及んだのである。
この第二の理由においては、イランも積極的に関わっていた。
イラクとアフガンの間に位置する国家がイランである。当然、米軍のイラク占領統治がスムーズにいくと、イランは挟撃される格好になる。だから、イランの革命防衛隊は仇敵のイラク旧バース党まで支援して、占領統治を徹底して妨害したのである。
これはまた当初の「7カ国打倒計画」という武力による「大中東構想」の野望が頓挫したことも意味していた。その苦肉の次策が例の「アラブの春」と思われる。
中東のひどい混乱には、アメリカが「テロとの戦い」と称して、イスラム諸国を爆撃し、人々を虐殺しているうちに「虚構の現実化」が起こったことも影響していると思う。
つまり、そういった被害者と、絶望的状況の中から、想定外の“本物のテロリスト”がどんどん生まれてしまった。また、イスラム世界は、国家レベルでも個人レベルでも、欧米に対して非常に敵対的になった。これらは次の中東戦争の遠因となろう。
以上の結果として、世界の状況は「影の政府」のコントロールの手に余るようになったと考えられる。昔から彼らは万能ではないし、よく失敗もするのだ。
ただ、私がもっとも懸念するのは、彼らが2005、6年ごろに、ポスト冷戦の大戦略を大幅に軌道修正したのではないかということだ。
端的に言えば、アメリカを頂点とするピラミッド型へと国際社会を再編して、その米一極支配体制を徐々に地球国家へと変えていくという戦略は、完全に放棄された。
その代わり、「影の政府」は「別の手法」でNWOを実現することにした。
すなわち、反抗する中ロを、武力などの“強硬手段”でねじ伏せるというものである。
いわば、穏健策から強硬策への転換である。
ただし、彼らは、どうも中ロを同時に相手にしたくないらしく、各個撃破するつもりらしい。とりわけ中国は、内部矛盾を突くことによって分裂させることができると考えているフシがある。しかし、プーチン・ロシアにはそのような手法はあまり通用しそうにない。言ったように、彼らが世界支配のために地政学的にどうしてもハンドルしなければならないと考えている国がロシアである。ロシア相手にはやはり武力しかない。
はっきり言えば「戦争」である。どうも世界支配層は、その戦後秩序でもって一挙に世界政府(NWO)を作るというプランのようだ。そのために今、西側の政治とメディアは必死でロシアの悪魔化を行い、孤立させ、屈辱を与えている。
だが、この「中ロ打倒路線」がうまく行くだろうか。とくに欧米諸国がロシアに対して戦勝国になれるという保証はあるだろうか。私はそうは楽観しない。
私は他の記事でも散々述べているが、プーチンが欧米の裏をかいて、先制核攻撃に打って出る可能性すら考えている。それは私が「現実情報」の収集と分析だけでなく、「超自然情報」のそれも行い、両者の補完融合をもって未来の予測を行っているからである。
そして、私はその破滅的なロシアと世界支配層との最終決戦――第三次世界大戦――が2020年代の前半中にも訪れるのではないかと、前々から述べている。
だから、私たちはそれに備えて、サバイバルしなければならないのである。
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