【パナマ文書】リークは工作の一つに過ぎず真の富裕層は隠れている

戦争・紛争・革命・崩壊






【パナマ文書・超真相シリーズ第2弾】

前回、グローバル勢力が政治・経済上のライバルや邪魔者を窮地へと追い込み、いずれは潰そうとしていること、そのために「パナマ文書」を使って大衆の怒りの矛先が彼らに向かうように仕向けていることなどを推察した。とりわけ、工作の最大の重心が置かれているのが「経済上のライバル潰し」であるが、ただそれを理解するためには「一連のイベント」として見る視点が必要だ、とも述べた。今回はそれについて報告したい。

■「一連のイベント」とは何か?

カリブ海のタックスヘイブン、モサック・フォンセカ、南ドイツ新聞、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)、その母体センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)、そして彼らの暴露を受けて騒ぐ大手メディア……実はみんなグルではないのか、背後に同一の仕掛け人がいるのではないか、という可能性については、前回触れた。メディアに関していえば、ただ単に踊らされているケースがほとんどだと思う。

これを、いわば「横の関係」とするなら、実は「縦の関係」というのも存在している。

〈オックスファム・レポート〉

「パナマ文書」騒動の少し前に、国際NGO「オックスファム」が「1%のための経済」というレポートを発表したことをご記憶だろうか。以下のような趣旨だった。

「現在は世界の上位1%が残りの99%よりも多くの富を持つ危機的状況だ」

「世界で最も裕福な62人が持つ総資産は低所得層の36億人の総資産に匹敵する」

「あまりに貧富の格差が拡大しており、各国は早急な対策が必要だ」

〈マッドマックス 怒りのデスロード〉

その前には、映画『マッドマックス 怒りのデスロード』が「注目の話題作」として公開前から大々的に(とりわけ欧米)メディアによって取り上げられていた。ご覧になった人なら承知だが、リメイクでも何でなく、事実上の新作だった。(以下スポイル注意!)敵役は水資源を独占することで権力を手にし、人々を奴隷にしている男だ。主人公たちはいったんそこから逃げるが、結局は戻ってきて悪と戦う道を選ぶ。そして水資源をみんなで共有して、めでたし、めでたし……という結末である。つまり、この映画はそもそも『マッドマックス』である必然性すらないのだ。事実、マックスは補佐役で、奴隷の女性が事実上の主人公役という摩訶フシギなリメイク作だ。

〈ピケティ・ブーム〉

さらにその前には、「ピケティ・ブーム」があった。フランスの経済学者トマス・ピケティの『21世紀の資本』は、数世紀にわたる資本主義の歴史を検証して、資本主義の発達が格差を拡大してきたことを立証した。一方で、格差の縮小をもたらすのが、所得税と一定比率以上の累進課税であり、これが世襲的富裕層を防止する効用があると説いた。ウィキペディアは「所得上位層の所得が総所得に占める比率の推移をめぐる研究は、2011年のウォール街を占拠せよ運動に大きな影響を与えた」と記している。

2013年版オフショア・リーク〉

あまり話題に上らなかったが、2013年には「パナマ文書」に先立ってプレ暴露ともいえる「オフショア・リーク」があった。それによると、約3兆円と、突出して租税回避額が多かったのが三井住友グループである。私は直接確認していないが、噂によると同社幹部の中には「嵌められた」という声もあったという。

余談だが、最近の陰謀論では、明治維新の資金をロスチャイルドやイギリスが出したという話が目に付くが、これは間違いであり、実際に薩長倒幕軍の最大の資金源となったのが三井と住友だ。つまり、この旧財閥こそ近代日本の陰の生みの親であり、今なお日本経済の中枢に位置する存在なのである。

〈オキュパイ・ウォール・ストリート〉

2011年9月、全米の若者や労働者が続々とNYに集結し、「ウォール街を占拠せよ」(Occupy Wall Street)と呼ばれる大規模抗議活動を行った。この運動は格差の拡大に憤る世界中の市民の共感を呼び、主要都市に拡散した。日本でも東京で行われた。

〈ノーベル経済学者たちによる警鐘〉

ちょうどこの運動に前後して、エコノミー・グルたちによって、資本主義社会の行き過ぎた現状に対する警鐘が鳴らされ始めた。たとえば、ノーベル経済学者のポール・クルーグマンは、格差の拡大を懸念して、市場原理主義が問題の根幹だと訴えた。また、同じくノーベル経済学者のジョセフ・E・スティグリッツも類似した主張を展開し、中でも「アメリカにおける格差が先進国中でも最悪だ」と訴えた。

以上、「パナマ文書」のほかに、「オックスファム・レポート」、「マッドマックス 怒りのデスロード」、「ピケティ・ブーム」、「2013年版オフショア・リーク」、「オキュパイ・ウォール・ストリート」、「ノーベル経済学者たちによる警鐘」などの例を並べていったが、これがここ5年ほどの「縦の関係」である。

ご覧のように、どれも類似のメッセージを含んでいる。「パナマ文書」だけを見ると、いかにも租税回避をしている悪玉を告発する正義の行為にしか見えない。いや、事実、フロントの人たちはそのつもりでやっているのだろう。しかし、こうやって並べてみると、そういう単純な話ではないかもしれないと気づかされる。状況証拠しかないのが残念だが、実はこれらもまた仕掛け人がすべて同じではないかと、私は疑っている。

信じられないのも無理はない。なにしろ、仕掛け人たちは「天才集団」なのだから。

■ライトアップ工作に注意せよ

と言うと、当然、次のような反論をする人もいるに違いない。

「これら一連のイベントを演出しようと思えば、複数の国にまたがって、しかも民間人や民間企業までコントロールしなければならない。それゆえ、仮に計画されたものだとすれば、仕掛け人は何らかの世界的な、もしかすると公式の政府をも超越した、巨大なパワーを持つ存在ということになる。しかし、だとするなら、ひどく矛盾した行動ではないか。なぜなら、一連のイベントに共通するメッセージは、結局は『肥え太った富裕層から貧困層へと富を大移動させて格差を是正せよ』というものだからだ。これは権力者サイド、とりわけ資本主義社会の支配層にとって大きな脅威のはずだ。実際、『パナマ文書』や『2013年リーク』は、資本家に対する憎しみのボルテージを上げるものだ。『ウォール街を占拠せよ』や『マッドマックス・リメイク版』に至っては、資本家に対して革命をけしかけているともいえる。仮に世界的なパワーを持つ特権階級がいるとして、なぜ彼らがわざわざ自分の首を絞めるような真似をしなければならないのか。まったく矛盾した仮説だ」

こう疑問に思われるとしても、無理はない。

しかし、注意しなければならないのは、そもそもピケティやクルーグマンやオックスファムのいう「富裕層」とはいったい誰のことなのか、という点である。明らかに、ビル・ゲイツ、ジム・ロジャース、ウォーレン・バフェット、ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、柳井正、孫正義、そして特定のブランドをファミリービジネスにしている一族たちのことだ。そういう人たちを指して「世界の低所得層の36億人の総資産と同等の資産を持つ62人」と表現しているのだ。これ自体は事実かもしれない。しかし、一部の事実の指摘が必ずしも全体としての真実を提示するものでないことに注意する必要がある。

実は、こういう手法を「ライトアップ」という。ある劇場の観客席に双子の兄弟が座っている様子を想像してほしい。劇場全体に光が行き届いている時には、彼らが双子であることがよく分かる。ところが、一方にだけスポットライトを当てるとどうか。そっくりな人間がすぐ隣に座っているのに、陰に入ってしまって、その存在が分からなくなる。

実は、特定の存在にばかり光を照射するこの手法は、人の心理の盲点を突くもので、別の存在を隠したい時などによく使われる。オックスファムが「世界で最も裕福な62人」と名指しし、メディアがその見方を拡大再生産すれば、たとえそれ以外の“最も裕福な人”がいたとしても、その姿はわれわれ大衆の視界から消えてしまうのだ。

おそらく、ピケティはたまたま世界権力にとって都合のいい説を唱えたために利用されただけで、内部の人間ではない。ここで説明する余裕はないが、『ボーダレス・ワールド』の大前研一氏や、『歴史の終わり』のフランシス・フクヤマも同じケースだ。要するに、世界権力がその時々に広めたいと考えている概念を代弁すると、売れっ子に祭り上げてくれるわけだ。実は『ハリー・ポッター』もそうなのだが、これはまた別の機会に譲ろう。

■見える富豪と見えざる超富豪

私の知る限り、ピケティの欺瞞に気づいたのは苫米地英人氏だけだ。氏の言わんとするところは、要するにピケティの指している富裕層とは既存のルール内にいる“見える”存在ばかりで、たとえばFRB(連邦準備銀行)を実質所有しているような銀行家一族は漏れているのではないか、ということだ。

たとえば、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の背後にロックフェラー財団が隠れていることは先述したが、そのロックフェラー家はどうなのか。

アメリカ「フォーブス」誌といえば、毎年、世界の長者番付を発表することで有名だが、2016年3月の最新版によると、デイヴィッド・ロックフェラーの資産は約32億ドルであり、世界603位でしかない。一方で、日本人トップの柳井正氏は146億ドルであり、世界57位だ。

しかし、ユニクロの柳井氏が1兆5千億円もの資産家で、あのロックフェラー家の当主が3千億円程度の資産家でしかないというのは、何かおかしくないだろうか。もしかして、ロックフェラーのお爺さんは、本当はとてつもない善人で、慈善事業にばかり力を入れてきたために、どんどん個人資産を減らしてしまったのだろうか。

むろん、これにはちゃんとカラクリがある。実は、この「フォーブス」誌の世界長者番付もライトアップ工作の手伝いをしているお仲間ではないか、と考えられる。

その「フォーブス」誌の元アジア太平洋支局長ベンジャミン・フルフォード氏は次のように言っている(文芸社『世界支配と人口削減をもくろむ人たち』2014年刊より)。

 私が記者時代に「ロックフェラーは権力者です」と言うと、「何を言っているんだ。彼らは昔の人たちで、『フォーチュン』誌の番付でも300位くらいで、すでに終わった人じゃないか」と言われました。それがみんなの認識でした。

しかし1918年発行の『フォーブス』まで遡って分かったのは、ロックフェラー1世は今のお金でいうと3000億ドルの財産を持っていたのに、急に貧乏になったということなんです。何が起きたのかといえば、財産を全部寄付したのです。

ロックフェラー財団を調べると、『フォーチュン』誌の全米上位500社をランキングした「フォーチュン・グローバル500」(世界企業500社番付)のほとんどの企業に投資しているではありませんか。日本の企業も資金提供を受けています。

『会社四季報』に載っている外資系企業は企業ではなく、ほとんどが財団です。ロックフェラー財団はカーネギー財団やヘリテージ財団など200以上の財団に分割され、外からはつながりが非常に見えにくくなっています。

■真の世界的大富豪はこうやって資産を隠している!

フルフォード氏によると、こうした財団や金融のからくりを調べ始めたとたん、仕事を干されたという。

しかも、狡猾なことに、彼らは支配下のメディアを通して、世間に対しては「今はすっかり没落したエスタブリッシュメントの慈善家」と印象付けることに成功している。

要するに、いま格差社会の象徴として名指しされている“世界的大金持ち”とは、一大企業のオーナーや、たまたま資金運用に長けた投資家たちのことだ。

対して、ロックフェラー家などの支配層構成一族は無数の組織に資産を分散させ、世間からは超富豪ぶりが見えないようにしている。とりわけ「何々財団」という公益法人だと非課税になる仕組みをフルに利用しているようだ。

つまり、法律上の「個人資産」ではないから世界番付の上位にカウントされないだけで、本当はその種の公益法人、持ち株会社、銀行、投資会社、企業同士の持ち合いなどを通して、実質的に何百という多国籍企業をコントロール下に置いている。それらの大企業が莫大な金融資産、エネルギー・鉱物資源、生産設備や知財、都市部の土地・建物などの“世界の富”の多くを所有している。

おそらく、法律上の個人資産・一族資産でなくとも、彼らが最終権限を握っている資産ということで言えば、「フォーブス」誌のトップ級と比較しても、ケタが二つは違うはずなのだ。要は、「FRBの大株主がNY連銀」→「NY連銀の大株主がA銀行」→「A銀行の大株主がB財団」という資本関係さえあれば、結局はその財団の理事会がFRBを動かせるように、彼ら的には「最終的に決定権さえ手元にあればいい」ということだろう。

■世界支配層の視点でモノを見る

さて、改めて「パナマ文書」に戻ろう。

つまり、「ノーベル経済学者たちによる警鐘」から「パナマ文書」へと至る一連のイベントが一貫して“標的”に定めてきたのは、いわば「見える富裕層」なのである。そうすると、「パナマ文書」リークの背後になんでロックフェラー財団の姿が見え隠れしているのか、なんとなく想像がつかないだろうか。まず、フレーム外に隠れている「真の超富裕層」が、猛追する後進を一網打尽にしようとしているのではないか……という推測が容易に成り立つ。

ちょうど、三代目将軍・徳川家光の治世を例に引くと、日本人には分かり易いかもしれない。家光は幕府の支配体制を維持・強化するため、大名家の領地換えや取り潰し政策を積極的に行った。もっとも、グローバル勢力が一枚上手なのは、そのために大衆をうまく使うことだ。だから、どんどん力をつける独立領主たちの存在を目障りに思っている中央の支配者が、「いつかワシの地位を脅かすかもしれんから、うまいこと潰してやれ」と、その領内の民衆を扇動して、攻撃するよう仕向けている様子を想像するといい。

たとえば、グローバル勢力は、普段はビジネス上のパートナーとして付き合いながらも、裏では異邦人集団の三井住友グループを警戒している。彼らは三井住友連合の雄トヨタを異常なほど敵視している。彼らは同連合に対して、裏で徐々に持ち株比率を高めてきたが、それでも依然として「世界最大のゴイム企業集団」だ。だいたい、三井と住友が連合した経緯も、彼らから防衛するためなのだが、この話は機会を改めよう。

いずれにせよ、私には、彼らがいよいよ「世界経済の総取り」に取り掛かり始めたように思えてならない。だが、どうやって? そして、何のために? それは次回で。

2016年5月12日「トカナ」掲載

(*題名・見出し等は少し変更してあります。また、この記事はトカナに掲載されたものとかなり異なりますが、こちらのほうが元であり、掲載記事のほうは編集部サイドの改変が入っています。たとえば、私は「闇の勢力」といった言葉は使いません。また、「一連のイベント」の右横にある言葉(たとえば〈マッドマックス 怒りのデスロード〉=権力者は悪)も、編集部側による追加ですのであしからず)

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