(*これは2023.10.13にアップした動画の字起こし版です。動画自体は削除済みです。)
「パート3」いきます。パート1・2を見ていない方は、先にそちらを見て下さい。
前回の動画で「大イスラエルと真シオニズム」という概念について説明しました。だから、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の完全併呑は、まだ「大イスラエル建国に向けた最初の一歩」程度に過ぎないんですね。
イスラエル的には、これから中東戦争へと繋げていって、その舞台で、最大の敵イランを打倒しなければならない。
そうして初めて、神から約束された大イスラエル帝国が誕生する。欲を言うならば、その他の大国はすべて弱体化させて、大イスラエルが「諸国民の王」となり、人類の頂点に立つ。
まさに世界国家イスラエル、惑星イスラエル・・・そんなところかもしれません。
ユダヤ教の選民思想の観点から言うと、それが必然的に彼らのゴールになります。
これからガザ地区ですぐに凄惨な地上戦が始まります(*重ねて申し上げますが、これは23年10月13日にアップした内容です)。そのプロセスで、又リアクションとして、シーア派を始めとするムスリム・ミリタント系組織が正規戦又は非正規戦(テロ)を実行し、戦闘がエスカレートし、どんどん周辺に広がっていく可能性が高いです。
すでにレバノンのヒズボラがイスラエル北部やゴラン高原への攻撃を始めています。ヒズボラはハマスの数十倍のロケット弾を所持しているそうです。
パレスチナ人というのは要はアラブ系ですから、いわば「アラブの大義」として、シーア派以外のアラブ人もデモしたり決起したりするでしょう。
また「対米テロ」も起きると思います。こうして周辺が延焼していく形で、結局は「イスラエル対イラン」の宿命の対決へと繋がっていく・・・。
今度の第五次中東戦争はそういうシナリオではないかと思います。
*アメリカは最初から参戦予定
今現在、トランプ筋が、バイデン政権によるイランの60憶ドル資金(約9千億円)の凍結解除の問題をやり玉に挙げていて、「イランを利した」と連日非難しています。
これは元々、韓国がイランに支払うべき石油代金でしたが、トランプ政権の“勝手イラン制裁”で、口座から動かせなくなっていたものなんですね。だから、この制裁を始めた張本人のトランプが怒っていて、それが米主要メディアにも取り上げられている格好です。
この米共和党系の発信を受けて、日本のYouTube・SNSの陰謀論系アカは、一様に「それみろ。欧米のDSは裏でイランを支援している。だから、対立する双方の背後には同じようにDSがいて、この戦争はDS軍需産業が金儲けするために仕組んだものだ」というふうに、みんな類似の主張をしています。
私はこれとは違う見方でして、トランプの主張はほぼ言いがかりに近いと思っています。
私の考えは「アメリカ的にはすでにイランを攻撃する予定だから、イランを少々利することは承知の上で、イランに拘束されているアメリカ人5人の解放を急いだ」というものです。そもそもバイデン政権の外交を実質取り仕切っているのはユダヤ系のブリンケン国務長官で、彼もトランプ同様、あくまでイスラエルの利益のために動いています。
まず、この60憶ドル資金が今回のハマスのテロに繋がった証拠は今のところないし、時期的にもまず無関係なはずです。しかも、この資金は元来、イランの正当な稼ぎで、それをアメリカが勝手に凍結して挑発していただけです。
それに考え違いしている人が多いですが、60憶ドル程度は準大国イランにとってそれほど大きな資金ではないです。現在、石油の値段は高騰していて、しかもイランは中国に石油を売って大儲けしています。
だから、日本の野党がよくやるように、トランプがバイデン政権の揚げ足を取っているだけであって、イランにとっては大した資金じゃないんですよ。むしろ、イランに人質を取られている状態だと、米軍が軍事的に非常に動きづらくなる。だから、バイデン政権は、少々イランを利してもいいから、イランとの捕虜交換を急いだんだと思います。
昔のイラン革命の時も「アメリカ大使館人質事件」があって、当時の民主党カーター政権がそれに散々引きずり回されて、人質救出作戦も失敗して、「アメリカの威信が大失墜した」とまで言われたんですね。
つまり、逆にバイデン政権がイラン攻撃をやるつもりだから、この「60憶ドル資金凍結解除」をして、捕虜交換を急いだっていうことなんですよ。
バイデン政権は、今度のことを、前々からイスラエルと申し合わせていると思います。たとえば、10月10日には、もう米空母「ジェラルド・フォード」がイスラエル沖に到着しています。あまりにも手際が良すぎる。
また、米報道を見ていると、もう安全保障担当補佐官レベルで「イランは共犯」とまで断言していますし、イラン革命防衛隊筋から「我が国がハマスを支援した」という証言までが出ています。
というわけで、アメリカは今度の中東戦争に前々から介入する予定でいたようです。そして、イラン・シーア派勢力と戦うイスラエルを軍事支援する、というわけですね。
おそらく、米本土でまたイスラム系組織によるテロが起きたり、中東にいる米軍が攻撃を受けたりして、結局は米軍も中東戦争の当事者になっていくんでしょうね。
*イランを盟主とする「巨大シーア派連合軍」
対するシーア派陣営を見てみます。まずシーア派の盟主イランが「イスラエルを地上から抹殺するべき」と言って、核ミサイル開発を進めて、両国が天敵同士にあることは、もはや説明不要だと思います。
それにレバノン、シリア、イラク、その他が、対イスラエルで連合を組む形になります。
そして、イランの後ろ盾がロシアです。これが凄く重要な意味を持ちますが、またの解説に回します。
まずレバノンですが、言ったように、すでにヒズボラがイスラエル北部やゴラン高原への攻撃を始めています。
1982年に結成されたヒズボラは、もともとイランの革命防衛隊から訓練を受けた民兵組織でしたが、現在ではヒズボラなくしてレバノンが動かないほどの巨大な政治軍事組織へと成長し、国家内国家を形成している。つまり、レバノンは今や「準ヒズボラ国家」なんですね。
しかも、このヒズボラはイランだけでなく、長年、シリアからも支援を受けてきました。だから、ヒズボラは、シリア内戦時に、盟友アサド政権のために義勇兵を派遣しています。シリアもまたイスラエル軍とずっと戦闘状態にあります。
つまり、イラン、シリア、レバノン(ヒズボラ)は「シーア派同盟」です。
そして、重要なことは、今ではイラクも、事実上シーア派の勢力下にある、ということです。
サダム・フセインの頃のイラクは、スンニ派主導のバリバリのアラブ人国家として、シーア派ペルシア人国家のイランと、対立関係にありました。実際、「イラン・イラク」戦争もありました。
しかし、2003年のイラク戦争以降、フセイン政権が打倒され、一時的に米軍の統治下になり、元々スンニ派の権力層が縮小しました。それで現在のイラクは、ほぼ多数派のシーア派国家になっています。
あのう、2020年1月3日、正月早々、トランプ大統領が、いきなりイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を無人機で攻撃してぶっ殺した事件がありましたが、この人はシリア・イラク・レバノンにあるシーア派武装組織の親分的存在だったんですね。でこの時に、イラクのシーア派民兵組織のアル・ムハンディス副司令も一緒に殺されています。
この革命防衛隊はイラン正規軍とは別個にホメイニ氏によって新設されたエリート軍事組織です。だから、当時、イラン人の怒りは凄かったです。司令官の葬式には数百万の民衆が集まって、アメリカに血の代償を支払わせると、叫んでいました。
ポイントはこの時点でイランはすでにイラク内のシーア派民兵組織を掌握していた、ということなんですね。
こうして、今やシーア派連合には、イラクも事実上入っています。
その他、サウジアラビアの南にあって、同国が手を焼いているイエメンのフーシ派も、イランから支援を受けている親イラン組織です。今回、このフーシ派と、イラク民兵組織も、「米軍が介入してきたら戦う」と宣言しています。ハマスやヒズボラだけではないんですね。
さて、以上のことから、今度の中東戦争は「米・イスラエル」と「シーア派連合」の対決になると思います。
どっちが先に攻撃するか分からない。あるいは、イスラエル的には「もう始まっている」という認識でしょうか。ハマスやヒズボラを長年支援してきたのがイランですからね。
しかも、中ロができるだけこのシーア派連合を支援するでしょう。
イスラエルの視点でいえば、世界最強の米軍の力を借りて、この「シーア派連合」を一挙打倒することで、その「戦後秩序」として「大イスラエル」が実現するわけです。
シオニストの深慮遠謀はもの凄くて、すでに2003年のアメリカの対イラク戦争で、フセイン政権を排除してイラクを弱体化させており、2011年の「アラブの春」以降のISとシリア内戦で、シリアを分裂・弱体化させています。
将来の「大イスラエル」領になる予定の二か国が、なぜか“偶然に”前哨戦に巻き込まれて没落してしまっているという、この不思議(笑)。
イスラエル的には、あとは実質、レバノンとイランを打倒するだけですが、レバノンは小国なので、本当にライバルと呼べるのは、あとイランだけです。そして、イランの後ろ盾であるロシアがウクライナ戦争に釘付けになっている今こそ、そのチャンスです。
これも偶然ではないと思います。
実は、私は2016年末から、「イスラエルがイランと戦争する前に、ウクライナ紛争が再燃して、ロシアがそこに釘付けにされるだろう」と主張していました。この予測は完全に的中しましたが、私の知る範囲では、この予測をしていたのは私だけだと思います。
まあこの辺も含めて、次回か、次々回には、また詳しく解説したいと思います。「パート4」へと続きます。
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