日本には固有の「危うさ」がある。
一言で言うなら、日本経済は「化石燃料上の楼閣」である。しかも、他の先進諸国に見られないほど極端に外国のエネルギー地下資源に依存している。
北米・EU(内で融通し合える国々)・オーストラリアとは訳が違うのである。
上表にあるように、日本の一次エネルギー供給の約85%が化石エネルギーであることから、日本が今なおどれだけ化石燃料に頼り切っている国家であるかが分かる。
しかも、重要なことは、それらが「海上輸送による輸入」である現実だ。
日本という国が、石油と天然ガスと石炭をどんな風に輸入して、それがどう日本経済を動かして、私たちの暮らしがどう成り立っているのか、そのことを本当に理解するためには経済産業省が発行している「エネルギー白書」を頭に叩き込まねばならない。
これはエネルギー問題を理解する上での必読書である。
資源エネルギー庁の「エネルギー白書」のページ
しかしながら、白書自体は膨大で余計な記述も多いので、とりあえず必読と呼べるのは、その中でも「第1章 国内エネルギー動向(PDF形式)」である。
十年以上前に、私は日本のエネルギー問題を詳しく調査していて、その時に数年連続して「エネルギー白書」の本版を買って、興味深く読んでいた。
以来、新情報の更新はほとんどしてないが、現在の日本のエネルギー需給構造は10年前と大差ないので、少々古い知識でも大丈夫だと思う。
まず、日本がエネルギー資源をどれだけ仕入れて、それをどのように転換して、各部門に何をどれだけ供給しているのか、その「全体像」を理解しなくてはならない。
それが一目で分かるのが、以下のバランス・フローの表である。
ちなみに、表に記入されている数字、つまり使用単位は、熱量のジュール「10(15乗)J」であり、分かりにくい。
私は昔、おそらく日本初だと思うが、独自に「万kwh」に変換したところ、大変分かり易くなった思い出がある。当時、偶然ではあるが、日本の総エネルギー需要が4兆kwhであり、うち1兆kwhが電力需要であるため、実にすっきりしていた。
ただ、さすがに今はそんな悠長で面倒な作業をやっている暇はない。
ちなみに、電力量は普通にkwh単位を使うが、石油や石炭を含めて論じる時は、熱量単位に統一するようだ。しかし、ジュールはkwhに変換可能なので、公式統計もkwhで統一したほうが絶対によい、というのが私の感触である。
さて、話が反れたが、上の表のうち、今回よく見ていただきたいのは、実際に消費する段階(最終エネルギー消費)である(↓)。
たとえば、私たちの家庭生活(ピンク色)では、使用するエネルギーのうち、約半分が電力であり、残りの約半分が都市ガスと石油製品(灯油等)である。
次は運輸部門(青緑色)を見てほしい。使用するエネルギーはほぼ石油系一択である。
それを詳しく示している別表が以下である。
ご覧のように、ガソリン(主に自動車)と、軽油(主にトラック)と、ジェット燃料(航空機)と、重油(主に船舶)が大半を占める。
電力はわずか3%程度であり、実はたったそれだけで日本中にあるすべての電車を動かしている。トラック輸送は電車輸送に比べてかなりエネ利用効率が劣る。
最後に「企業・事業所他」(紫色)を見てほしい。
使用エネルギーのうち、3割が電力となっているが、これは事務所ビルやサービス業、学校・病院などの「業務部門」を含めているからであり、製造業だけで見てみると、消費するエネルギーのうち、電力は2割程度に留まる。
やはり、工業の現場では、石油やガス、石炭を直接燃やすプロセスのほうが多いのである。製鉄などは今でも全面的に石炭に依存している。
しかも、「電力」といっても、実際は4分の3が化石燃料由来である。
だから、家庭部門が消費するエネルギーのうち“半分”が電力だと言ったところで、その4分の3は石炭や天然ガスを燃やして作られている。
だから、万一、化石燃料の供給が途絶えれば、家庭部門が使えるエネルギーは、一挙に従来の十分の一強に減じる。
運輸部門に至っては、電化がほとんど進んでいないため、完全停止に近くなる。
少なくとも自動車(貨物・旅客共)は全面ストップする。
ただし、電力の4分の1は、水力・太陽光などの「再生可能エネルギー」や原子力に由来するため、それを優先的に回せば電車(貨物・旅客共)だけはかなり稼働できる。
また、石油とLNGは、海外からの供給が止まれば、国内備蓄を使い果たした後は、正真正銘、在庫ゼロになるが、石炭は国産でかなり代替できる。
だから、電力に関しては、石炭を国産に切り替える措置により、需要の半分までは供給可能になるし、原子力の稼働基を増やせば、もっとも賄うことも可能だ。
よって、仮に海外からの化石燃料の輸入がストップしても、電力をうまく配分すれば、一般家庭の電力ライフと、電車運行と、一部の工場は、なんとか稼働できる。
しかし、繰り返しになるが、自動車(貨物・旅客共)は全面ストップのままだ。
全体として見れば、細かく計算したわけではないのであくまで私のだいたいの見積もりになるが、日本の生産と流通の7~8割は停止するはずである。
中国が日本のシーレーンを遮断すれば。
中国軍は容易に日本の生命線を遮断できる
そんなことが起こるのか?
まず、中台戦争が始まったら、ガイドライン上、日本は介入することになっている。
つまり、自動的に巻き込まれる。
習近平もやる気満々である。江沢民や胡錦涛と違い、習近平はやたらと軍服を着て、最高司令官をアピールする。そして、3期政権で、自らの独裁体制を固めた。
おそらく、うまく台湾軍を挑発して、「先に台湾軍が攻撃してきた」というような口実を作り出して、台湾との戦争に持って行くつもりではないか?
現在、中国では反体制運動も燻っているので、習近平的には開戦動機があり過ぎる。
その際、もし日本が本物の独立国家なら、局外中立でいいのだが、日本は米国の子分であり、海上自衛隊は米第七艦隊の下請けなので、否応なく戦わされる。
だいたい中国のほうも、尖閣はおろか、先島諸島を取りにかかる。
そして、ここが肝心だが、中国は日本のシーレーンを遮断しにかかる。
なぜなら、それによって、世界最大級の化石燃料輸入大国の日本が「戦わずして屈服する」又は「干上がる」ことをよく知っているからである。
中国海軍は、南シナ海とフィリピン海に展開し、日本の大型タンカーを沈めにかかるだろう。しかも、昔のように必ずしも潜水艦を使う必要はない。
今では、中国本土から弾道ミサイルや巡航ミサイルを撃って、中国の独自GPSで誘導し、船舶を攻撃することができる。
小型の無人潜水機のようなドローン兵器もある。
だから、最新の現代戦になれば、米空母もあまりアテにならない可能性がある。
言ったように、これで日本の生産と流通の7~8割は停止するはずである。
しかし、依然として、一般家庭の電力ライフと、電車運行と、一部の工場は、なんとか稼働できるはずだ。
で、本当の問題というか、真の困難は、ここからである。
実のところ、シーレーンの遮断くらいで済めば、まだ慈悲深いほうなのだ。
プラス、日本本土のインフラに対する直接攻撃も十分ありえる、ということだ。
実際に、現在、ロシアがウクライナに対してやっている。
つまり、仮に中国軍が日本の電力インフラまで攻撃し始めたらどうなるか?
再生可能エネルギーの主力である水力ダムを攻撃し始めたらどうなるか?
・・・という問題なのである。
石油と天然ガスの供給が断たれ、その上、国内の発電所それ自体も攻撃されて破壊された場合、恐ろしいことだが、日本の生産と流通はほぼ全面停止する、というのが私の見立てである。
大銀行の〇〇研究所や政府系シンクタンクが細かくシミュレーションしても、私と同様の結論に達するはずである。
しかも、昔のように「何々師団」といった陸上部隊を繰り出すことなく、今はすべて中国本土からのハイテク・ミサイル攻撃だけでできてしまう。
イージス艦が迎撃してくれる? 数千発の攻撃を? 物理的に無理。
何も日本の都市部を攻撃して、日本人を大量虐殺する必要などないのだ。むしろ、日本国民を無傷のまま生かしたほうが、兵糧攻めの効果が高くなる。
あと、発電所の中でも、原発が攻撃された時のリスクーー少々の攻撃では壊れない設計ではあるがーーについては散々言われてきたことなので、繰り返す必要はあるまい。
不気味なのは、ここ数年、ロシアと中国が極東地域で合同演習を繰り返してきたことだ。おそらく、中ロはかなり前から世界大戦を想定していたフシがある。
仮想敵国はむろん日本とアメリカである。
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