本当に求められる充電インフラとは?――政府は急速充電器の整備費を追加せよ

EV関連
出典 栃木県河内郡上三川町(かみのかわまち)役場サイト




公共事業には正しいものと、間違ったものがある。

これから伸びる「芽」の部分に投資する場合は、経済効果が高い。EVの充電インフラを整備することは、これに当たる。言ったように、EVの車体のほうは5年後くらいには普及条件を満たす。よって、その5年先を見越して今から充電インフラの整備を始めるというのはごく当たり前のことである。これは必要不可欠な投資であり、惜しむべきではない。 



経済産業省の計画ではまだ不十分

経済産業省が1千億円を投じてEVの充電インフラの整備に本腰を入れ始めたことは大いに評価したい。しかしながら、同省の計画ではどうも中途半端という印象が拭えないのも事実だ。同省が掲げる急速充電器の整備の概要は、以下のようなものだ。

1・目的地の途中で充電可能な「経路充電」の充実(ガソリンスタンド、道の駅、コンビニ等)

2・目的地における「目的地充電」の充実(テーマパークやショッピングセンター等)

こういった場所に急速充電器を約3・5万台設置するという。だが、経済官僚の皆さん、残念ながら、これだけではイカンのだ。不十分と言っていい。とりわけ上のような民間の施設はスクラップ&ビルドが激しく、どうしても安定性や継続性に難がある。

たとえば、EVが普及するとガソリンスタンドは減っていく(*今でさえ年々減少している)。すると、仮に今、急速充電器を設置したとしても、結局はそれを撤去しなければならない。「充電専用ステーション」として生き残っていくことも難しい。なぜなら、充電時間が長いので、異常に回転率が悪い。よほど課金しないと、商売が成り立つとは思えない。また、コンビニしても、充電のために一つの駐車スペースを30分も占領されることは、商売上、決してメリットが高いとはいえない。専用駐車場が広々としている田舎ならともかく、都会のコンビニならば設置に前向きになれないだろう。対して、レジャーやショッピング施設などへの導入・実際の稼動は、うまくいくだろう。しかし、やはり継続性に問題があり、今設置に助成しても、十年後に残っている保証はまったくない。

つまり、上の例でいえば、安定した設置場所は「道の駅」くらいだ。たしかに、上のような民間施設でも、無いよりはあったほうがいい。現に「目的地充電」の充実は、EVユーザーからも望まれていることである。レジャーやショッピング施設が自ら顧客サービスとして導入したいのであれば、それに助成する事は、今は正しいと思う。

だが、本当に大事なことは、長く使われ続ける「本命」「標準」たりえる安定した充電インフラを築き上げることではないだろうか。上のような民間施設への設置がそれに値するかというと、非常に疑問だ。だから、経済産業省の計画によって、EVの一定の普及は約束されると思うが、真のEV社会の到来を約束するまでには至らないかもしれない。

これこそ何千万台ものEVの走行をしっかり支える充電インフラだ、という自信作を創り上げるには、現在の自動車交通システムの常識に囚われるべきではない。柔軟な発想、未来に対する想像力、長期的な視点などが求められる。当然、先行者ゆえに試行錯誤を要するに違いない。だが、様々なユーザーの立場にたって、「最大多数の最大利便性」というのものを追求していけば、最終的には正しい答えに辿り着けるのではないだろうか。

これが充電インフラの本命だ――ストリートにこそ充電拠点を!

その観点から、以前に私が提唱したのが、「幹線道路沿いとその脇道を中心にした全国的な急速充電器網」である。しかも、国交省が法人を立ち上げ、自ら整備に尽力する(*国交省が駄目としても、他の役所や自治体、また電力会社でも代わりは可能)。特徴はストリート上に「電気の自動販売機」として設置することだ。以上の理由は幾つかある。

第一に、単純に交通量がもっとも多い場所(=幹線道路)が、給エネ需要のもっと高い場所と考えられる。もちろん、大量設置後にはPOSシステムで需要動向を把握し、ニーズに合わせて充電器を移設して、過不足を解消していく形になろう。ちなみに、幹線道路といっても、高速道や有料道は別個に考えるべきで、SAやPAに設置する形になる。

第二に、ガソリンスタンドのように専用の土地を確保する必要がなく、公道上に「ニッチ」的に設置できる。その場合、土地代が不要だ。仮に土地代がかかると、何らかの形で消費者や納税者に転嫁される。また、土地の賃貸が介在しないことは、迅速な整備策にも向いている。ゆえに国交省系事業だと、もっとも素早く、低コストで整備可能だ。

第三に、事業の安定性・継続性がある。浮き沈みが激しい民間施設ではなく、いったん公道上に設置したモノは、その場所にずっとあり続けることができる。

第四に、営業時間に拘束されることもなく、24時間の無人運営が可能だ(*つまり、飲料系の自動販売機と同じである)。道路脇に設置されているので、ユーザーもどこかの施設の中を出入りする必要がなく、いつでも気軽に利用することができる。

第五に、トラックやタクシーなどの業務用車両をカバーできる。道路がなによりも産業利用されている点を見過ごすべきではない。とくに1500万台のトラックにとって「目的地充電」はほとんど意味を成さず、あくまで「経路充電」に依存するほかない。この膨大な業務用需要をカバーせずして、充電インフラの本命たりえない(*ちなみに、いずれ大型トラック専用の急速充電器も必要になってくるだろう)。

第六に、同じ道路(歩道)上に太陽光パネルや小型風車を設置し、それを充電器の電源とすることができる。以前に私は、東西を走る道路の北側にパネルを「バス停置き」することを提案した。たとえば、家庭用標準タイプの3・5kWのパネルを設置し、その電力をEVへと投入した場合、試算では年間に「千リットル」もの燃料削減効果がある。また、この方式だと災害時・停電時にも自立して機能し続けることができる。

以上のように、消費者の利益やユーザーの利便性という観点に立てば、幹線道路沿いとその脇道は急速充電のベストポジションであり、また自動販売機方式の売電はベストな販売形態ではないだろうか。私は、このような方式を主とし、数千億円の公共事業費を投じて、2020年までに一挙10万台の急速充電器を整備することを断固提案したい。

それは都会の公道でよく見かけるコインパーキングに近い。ただし、イメージ的には、パーキング・メーターが建つというよりは、ちょうど公衆電話ボックスが復活すると思ったほうが分かり易いかもしれない。その足元の地面に「充電専用」と白線で記されたスペースが設けられている…そんな絵である。場所によっては、その停車スペースのために歩道側を少し削る必要も出てこよう。また、実際に例の透明なボックスで急速充電器を囲い、雨風から守るようにすれば、機械が長持ちするはずだ(*まったく余談だが、公衆電話ボックスは、かつては70万台以上あったが、今は23万台だという。10円玉の収入でちゃんと採算をとっているわけだから、たいしたものである)。

しかも、重要なことは、充電に際してちゃんとお金をとるということだ。なぜなら、電気はタダではないからである。現在、日産や三菱などのディーラーは無料充電のサービスを行っているが、こういう経済原理に反する行為は、仮に自主的なサービスであっても決して長続きしない。急速充電器は、地元の電力会社から電気を仕入れ、それをユーザーに転売する。その際、kWhごとにプラス数円を課金する従量制の料金体系が望ましい。

しかも、電子マネー決済にすればコストを抑制でき、ビジネスモデルとして確立しやすい。現在、EVに対して奇妙な電気の売り方をしているケースが多いことに危惧を覚える。繰り返すが、充電量に応じてちゃんと料金をとるということが唯一の妥当な方法である。

こうして、いったん10万台を整備して20年間は使い続けるようにする。そうすれば、24時間無人の、同じ形式の急速充電器が、全国どこにでも存在する形になる。公道上なので、充電のためにどこかの施設に出入りする必要も、誰かに気兼ねする必要もない。

このようなストリート上の充電インフラこそ、本格的なEV社会を支えられる確固たる基盤となり、事実上の日本標準、否、もしかして「世界標準」になるかもしれない。

以上、「なぜ日本はEVの普及を急ぐべきなのか(その9)――急速充電器の迅速な整備がEV普及の鍵を握る」と内容がかなりダブってしまったが、ご寛容のほどを。

2013年02月14日「アゴラ」掲載

(ストリート上の自動車向け「電気の自動販売機」とは、こういうイメージですね)

 

再掲 幹線道路にある駐車スペース。こういった方法で充電スペースも設ければいのでは。

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ストリート充電器

この公衆電話ボックスをそのまま急速充電器に変えたイメージです。そういうのが、道路上のあちこちにあれば、都会のユーザーでも気軽に充電できるし、都市部のマンション族も気軽にEVのオーナーになれます。

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