エヴァンゲリオン「ゼーレ」の七つの目の由来、そしてヨハネの黙示録

予言・予知




さて、「フリー座」のほうで、過去の本に関する記事を載せたが、

「トンデモ予言者大集合」から外された記事を掲載する
1998年に発売したこの本の章立ては次のようになっていた。 第一章 トンデモ大偉人の巻 6項 第二章 トンデモ大言壮語の巻 5項 第三章 トンデモ予言研究の巻 6項 第四章 トンデモ宗教大予言の巻 6項 ご覧のとおり、第二章だけ他と比べて数

その関連でオカルトネタを一発いくことにした。それは、この奇妙な七つ目の動物はいったい何なのか、という話である。

実は、この本を出した少し前、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が大ヒットしていた。最近『シン・ゴジラ』で同じく大ヒットを飛ばした庵野秀明監督の作品である。

この「エヴァ」の中で、「ゼーレ」(Seele)という謎の組織が登場する。ドイツ語で「魂」を意味するらしい。ちなみに、「ネルフ」(NERV)もドイツ語で「神経」の意味。

OPの1:14あたりで「ゼーレ」のシンボルが瞬間的に登場する。それが冒頭のアイキャッチ画像である。で、アニメがヒットした当時、「いったいこれは何なのか?」ということがファンの間で話題になった。だが、そこはファン。すぐに元ネタを見つけた。

聖書の「ヨハネの黙示録」に由来していたのである。該当部分を引用しよう。

「わたしはまた、玉座と四つの生き物の間、長老たちの間に、屠られたような子羊が立っているのを見た。子羊には七つの角と七つの目があった。この七つの目は、全地に遣わされている神の七つの霊である。子羊は進み出て、玉座に座っておられる方の右の手から、巻物を受け取った。」(黙示録5:6~7)

この七つの目をもつ子羊は、イエス・キリストのことである。ゼーレのシンボルは、これに由来していたのだ。

これだけだと分り辛いので、ちょっと説明を補完しておく。



ヨハネの黙示録

これを記した使徒ヨハネは、1世紀末のローマ帝国時代、エーゲ海にたくさんあるギリシアの小島の一つパトモス島 (Patmos) に流刑にされていた。ある時、ヨハネは、島の洞窟でイエス・キリストの啓示を受けた。そして「黙示録」などの文書を記した・・・とされている。

彼はその時、「ラッパのように響く大声」を聞き、天に「開かれた門」があるのを見た。そして、「ここへ上って来い。この後、必ず起こることをあなたに示そう。」と命ぜられた。そうすると、天に玉座があって、神が座っていた。その周りに二十四人の長老たちが座っていて、さらに目がたくさんある奇妙な四つの生き物がいた。

玉座にいる神の右手には、七つの封印を施した巻物が握られていた。この封印を解いて、巻物を開く資格のあるものとして、七つ目の子羊=イエスが登場するわけだ。

さて、巻物を受け取った子羊は、封印を一つ一つ解いていく。そのたびに恐ろしい出来事が起こって、世界がどんどん破滅へと近づいていく。

たとえば、第一の封印を解くと、

見よ、白い馬が現れ、乗っている者は、弓を持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上に更に勝利を得ようと出て行った。

第二の封印を解くと、

すると、火のように赤い別の馬が現れた。その馬に乗っている者には、地上から平和を奪い取って、殺し合いをさせる力が与えられた。

第三の封印を解くと、

黒い馬が現れ、乗っている者は、手に秤を持っていた。(略)こう言うのを聞いた。「小麦は一コイニクスで一デナリオン。大麦は三コイニクスで一デナリオン。

第四の封印を解くと、

青白い馬が現れ、乗っている者の名は「死」といい、これに陰府が従っていた。彼らには、地上の四分の一を支配し、剣と飢饉と死をもって、更に地上の野獣で人を滅ぼす権威が与えられた。

・・・と、こんなふうに、世界は破滅へと向かっていく。

そして、最後の第七の封印が解かれた時、空前の天変地異と大戦争が起き、恐ろしいサタンや獣が現れ、人々も一時的に支配され、世界はほとんど地獄と化す。

しかし、最後には天の軍勢が勝利し、新しい天と地が現れ、神の栄光に輝く聖なる都エルサレムが天から下ってくる。そして最後の審判を経た人々は、もはや死もなく、悲しみ・嘆き・労苦もなく、再臨したイエスと共に新たな神の世界に住まう・・。

ほとんど狂気の産物のように思えるが、一応は新約聖書のトリを飾る預言である。

サン・クリメン聖堂(Sant Climent de Taüll)の壁画

ということは、この「ゼーレ」という組織は、作品では、そんなふうに世界を破滅に追いやって、また救済する役割を担っているのではないか、という推測がつく。

さて、「ゼーレ」のシンボルの由来が分かり、さらに元になった「絵」が存在するらしい情報も拡散した。ところが、それがどこに、どんな風に存在しているか、という情報はなかった。当時、普及が始まったばかりのインターネットを使っても、出てくることはなかった。そこで私が国会図書館の宗教関係のコーナーをあさって、突き止めることにしたのである。

で、それを突き止めたので、少し自慢げに、自分の本に使った、というわけである。以下は「トンデモ予言者大集合」の286ページ。

上に記している通り、スペインのサン・クリメン聖堂にある絵だったのだ。どうも壁画がきれいになっているので、今では修復されているらしい。

聖堂内の壁画 きれいに修復されている。

七つ目の神の子羊

どうも、この建物は、バル・ダ・ボイ渓谷という、たいへんな田舎にあるらしい。

Sant Climent de Taüll - Centre del Romànic de la Vall de Boí
Consagrada el 10 de desembre de 1123 per Ramon Guillem, bisbe de Roda Barbastre, l'església de Sant Climent de Taüll es ...

まあ、ご興味のある方は、どうぞ現地まで行かれるとよい。

蛇足 ゼーレの新マークについて

ちなみに、「エヴァンゲリオン」の新劇場版では、マークが少し改変された。

どうやら、エデンの園にあるという「善悪の知識の木の実=知恵の実」と、それを「女(この時にはまだ名はない)」に食べるよう唆した「蛇」が新たにモチーフとして加えられたらしい。ただ、これはよくある誤解で、聖書には「りんご」とは書いていない。木の実を食べたあと、目が開き、自分が裸であることに気づいて、「いちじくの葉をつづり合わせ」て腰を覆うものを作ったとあることから、たぶん「いちじく」が正解だろうと言われている。

りんごの中にある詩は、検索すればすぐに出てくる。

ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の原詞となったフリードリヒ・フォン・シラーの詩「歓喜に寄せて」の一節(*歌詞ではない)。シラーはドイツの大文学者。訳は複数存在してるが、私的には日本語的に感じのいいカッコ内のものを採用した。

überm Sternenzelt
Richtet Gott,
wie wir gerichtet.

(星空の上で神がお裁きになる、我らがいかに裁いたかを)

ちなみに、シラーはフリーメイソンで、交響曲第9番は事実上の国歌ならぬ「欧州連合歌」とされている。

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