現地時間2016年7月1日、バングラデシュの首都ダッカで、レストランで飲食中の日本人男女7名を含む20名が、イスラム過激思想に染まった武装グループによって殺害される悲惨な事件が起こりました。犠牲になった日本人やイタリア人は、同国の発展に尽くしていた人たちとのことで、ご本人の無念と、ご遺族の心中は、察して余りあるものがあります。
ただ、テロリストへの怒りと憎しみに捕らわれたら、ふと、米軍の空爆で民間人である家族や友人を虐殺されたアフガン・イラク・シリアの人たちも同様の苦痛に苛まれたに違いないこと、またその悲劇が“対十字軍戦”に志願するイスラムの若者を生む背景の一つになっていること等に思いを馳せてみることも、無駄ではないかと思われます。
急増するテロ事件の数々
さて、近年、やたらとイスラム過激派によるテロ事件が頻発しているという印象を、みなさんも抱かれているのではないでしょうか。彼らが関わったか、又は関わったと思われる近年の主要なテロ事件を、以下にまとめてみました。
・「シャルリー・エブド襲撃事件」(2015年1月)・・・武装集団がパリの風刺週刊誌「シャルリー・エブド」社を襲撃し、編集長ほか12人を殺害した事件。
・「バルド国立博物館銃乱射事件」(2015年3月)・・・武装した二人組がチュニジアのバルド国立博物館で銃を乱射、3名の日本人を含む22人の外国人観光客を殺害した事件。
・「スルチ自爆テロ事件」(2015年7月)・・・トルコのスルチにある文化センターでIS要員が自爆テロを行い、32人が死亡した事件(余談だが、これを受けてトルコ政府は米軍に国内の空軍基地使用を許す決断をし、現在、ISとの泥沼の報復合戦に発展中)。
・「アンカラ自爆テロ事件」(2015年10月)・・・トルコの首都アンカラで開催中のクルド人集会を狙ってISが自爆テロを行い、同国史上最悪となる100人以上が死亡した事件。
・「コガリムアビア9268便撃墜事件」(2015年10月)・・・ロシアの航空会社コガリムアビアの旅客機がエジプト・シナイ半島で墜落し、乗客乗員224人全員が死亡した事件。原因について見解が分かれているが、ISが犯行声明を出し、ロシア政府も墜落は外部からのテロ攻撃によるものと断定。
・「パリ同時テロ事件」(2015年11月)・・・IS系の過激派組織が、フランス軍によるシリア・イラク領内への爆撃に対する報復と称して、劇場など複数の場所を襲撃した事件。死者130人、負傷者300名以上に及び、オランド大統領は対テロ戦争を宣言した。
・「イスタンブール自爆テロ事件」(2016年1月)・・・トルコ・イスタンブールのブルーモスク(世界文化遺産スルタンアフメト・モスク)周辺で、IS要員とみられる自爆テロにより観光客10人(うち9人はドイツ人)が死亡した事件。
・「ジャカルタ自爆テロ・銃乱射事件」(2016年1月)・・・イスラム系の武装集団が、スターバックス内での自爆テロを皮切りに、ジャカルタのビジネス街で一般市民や警察への銃撃・爆破などを行い、5人の市民が死亡、22名が負傷した事件。「ISILインドネシア」名で犯行声明が出された。
・「ベルギー連続テロ事件」(2016年3月)・・・ブリュッセル空港や地下鉄で起きた連続爆破テロ事件。死者38名、負傷者198名を出したが、死者の中には3名の実行犯も含まれていた。「ベルギーが有志連合軍に参加しているため」とISが犯行声明を出した。
・「フロリダ銃乱射事件」(2016年6月)・・・イスラム過激思想に染まった犯人がフロリダ州オーランドのナイトクラブで銃を乱射し、同種の事件としては米犯罪史上最悪となる50人が死亡した事件。
・「アタチュルク国際空港自爆テロ事件」(2016年6月)・・・トルコのイスタンブールにある同空港で自爆テロが起き、44人が死亡、200人以上が負傷した事件。トルコ政府はISが関与したと発表。
・「ダッカ飲食店襲撃事件」(2016年6月)・・・今回の事件(冒頭、記)。
・「バグダッド自爆テロ事件」(2016年7月)・・・イラクの首都バクダッドで213人が死亡した自爆テロ事件(*今現在、重傷者が多く、死者はまだ増える模様)。
・「サウジアラビア3都市自爆テロ事件」(2016年7月)・・・聖地メディナの治安機関の近く、西部ジッダの米総領事館近く、東部カティフのシーア派のモスク近くなどで、それぞれ同日に自爆テロが発生し、4人が死亡、数名が負傷した事件。
トランプ政権に入って比較的落ち着いてきた感はありますが、その代わり、今度は国家と国家のいさかいが増えてきました。
■故ポール・ソロモンが予言した時代がついに到来か?
いかがでしょうか。これだけのテロ事件がわずか一年半の間に起きました。異常な頻度で相次いでいると言わざるをえません。むろん、テロ事件は昔からありました。しかし、近年のそれは、昔日のそれとは明らかに“質”が異なってきています。というより、イスラム過激派による犯行ばかり、という「同質性」が目立ってきました。
しかも、犯人像を見る限り、決して特殊な人ではありません。テロの直前までごく普通の若者だった、というオチが多い。つまり、一般のイスラム教徒から国籍を問わず決起する人々が続出しているのが実情のようです。よって、残念ながら、識者にありがちな「一般イスラム教徒無関係説」は必ずしも正しくなく、むしろその一般の人々の集合的無意識にあるものが一部の人の身体を借りて噴出しているという印象を受けざるをえません。
ここで私が想起するのが、故ポール・ソロモン氏の予言です。
彼は「これから起きる大戦」として、経済戦争economic warと並んで宗教戦争religious warを挙げ、「イスラムの人々が“残りの世界の人々”(the people of the rest of the world)に対して立ち上がる」と予言しました。
ソロモン氏が四半世紀前に予言した時には、今ひとつ現実味を欠いていました。ところが、今では、まさに我々の眼前で展開されている光景と評しても差し支えありません。
■一般のイスラム教徒の若者が相次ぎ決起する
ただし、今にして思えば、結果として予言は的中したかもしれませんが、「イスラム教圏の人々が世界的な銀行・経済システムからシャットアウトされている事態に不満を募らせて決起する」という類いの説明は、やや欧米人的な偏見に彩られている感がします。
彼ほどの人物ですから、悪意のない無意識的な過ちでしょうけども。
ただし、偏見ということに関していえば、「若者が過激派に洗脳されてテロや戦闘に向かっている」という固定観念に囚われがちな日本人も五十歩百歩でしょう。
むろん、そういう側面はありますが、明らかに、それですべて説明がつくほど単純な話ではありません。そもそも、「自分は死んでもいいから敵に一矢報いたい」と覚悟を決めるのは、よほどのことです。それは人間として「最後の手段」です。
誰が彼らをここまで追い詰めているのでしょうか。当然、彼ら自身の様々な社会的要因もあるでしょう。たとえば、非民主的な政治や教育システムなどです。近代化の遅れと多くの社会問題に関しては、彼ら自身も責任を負わねばなりません。
ですが、未だに止むことのない欧米の犯罪的行為に大きな責任が着せられることもまた事実ではないでしょうか。
この問題を考える時、長期にわたる両文明間の関係にまで視野を広げることは重要ですが、とりあえず19世紀の帝国主義時代まで遡れば足りると思われます。現代のイスラム教徒の間には、オスマン帝国衰退から現代に至る1世紀半もの屈辱と挫折の記憶があります。
ただし、私はその怨念に拍車をかけたのがむしろ「戦後」だと考えています。
一つは、イスラエルの反人道的行為と、それを容認してきた欧米の偽善や二重基準です。もともと同国は、シオニストのテロ組織がアラブ人の村々を襲撃し、人々を脅かし、追い払うことで建国されました。
そのテロリストたちがそのままイスラエルの初期の政治家や軍幹部にスライドした格好です。
だから、パレスチナ自治区に対して、現代史的にも稀に見るほど残酷な異民族統治を続けてきました。これに対して欧米諸国の政府と主要メディアがどんな態度を取り続けてきたのかはご想像の通りです。
まさに「アラブ人だから」とか「イスラム教徒だから」といった差別的な理由で軽く扱われてきたのが事実です。
もう一つは、ここ数十年の出来事です。とりわけ、「911事件」後に始まった対テロ戦争が「駄目押し」になったというのが私の推測です。
この事件は、今にして思えば、ビン・ラティンというサクラを使った「ヤラセ」だった可能性が高い。ところが、アメリカとその同盟国が、そうやって無理やり「敵」をでっち上げ、空爆や地上戦で何十万もの人々を虐殺しているうちに、半ば虚構だったものが現実化していったと私は考えます。
一般市民が次々と犠牲になる中で、まさに“普通の”イスラム教徒たちは強い負の想念に捕らわれ始めたに違いありません。
「なんで欧米人が安楽を貪っている中で、われわれだけがこんな酷い仕打ちを受けなければならないのか。なんで国際社会とやらは、これほどまでに不公平で、われわれの感情と犠牲に対して鈍感なのか」と。
彼らは長年にわたって、いわば「恨み」とか「呪い」といった負の想念と被害者意識を潜在意識下に抑圧し続けてきました。
世界で頻発するテロ事件は、ここへ来てそれが大噴火し始めた様子を現しているのではないでしょうか。
しかも、何の目的かはともかく、その状況に欧米の諜報機関がつけ込んで、さらに火に油を注いでいるというのが事の真相のように思われます。
■人類は今や“漠然と始まった世界大戦”の真っ只中にいるのか?
2014年9月、ローマ法王フランシスコは、ミサの中で、数万人の巡礼者たちに向けて「世界はすでに第三次大戦の状態にある」という認識を示しました。そして15年11月、パリで同時テロが起きると、法王は改めて同様の見解を述べました。
これについて僭越ながら、私は近著『神々の予定表』の中で次のように述べました。
今にして思えば、舌足らずでした。すでにテロという形をとって中東の枠外へと飛び出し、世界中に飛び火しているのが実態でした。
つまり、現実はもう私の予想の上を行っている状態です。興味深いことに、元外務省分析官でインテリジェンスの専門家である佐藤優氏も、ダッカ飲食店襲撃事件を受けて、同じように「宣戦布告なき第三次世界大戦が起きている」と警鐘を鳴らしています。
残念ですが、今から25年前に故ポール・ソロモン氏が発した警告は、どうやら現実のものとなってしまったようなのです。
■意識するしないに関わらず、2015年1月から「十字軍連合」の仲間入りをしてしまった日本!
という、故ポール・ソロモン氏の予言した宗教大戦religious warの時代がやって来たようです。
問題は、ソロモン氏は「日本も巻き込まれる」と予言していましたが、どうやらそちらのほうも的中してしまったらしいことです。
15年1月、シャルリー・エブド襲撃事件直後のタイミングで、安倍総理が中東各国を歴訪しました。その際に総理が行った公約が国際社会で大きな注目を集めました。
同1月17日、ロイターは、
Japan’s Abe pledges support for Mideast countries battling Islamic State
(日本の安倍がイスラム国と戦っている中東諸国に対する支援を誓う)
と題して、次のように大きく報じました(以下、拙訳)。
この場合のwillは「確実な予定」のニュアンスです。
そしてこの翌日、安倍総理はイスラエルを訪問。ネタニヤフ首相と会談し、テロ対策などにおいて両国が連携強化する旨を、次のような場面で合同発表しました。
(出典:首相官邸サイト)
これにすぐさま反応したのがISでした。
早くも1月20日には「日本の政府と人民へのメッセージ」と題する政治声明ビデオを動画サイトにアップしました。
映像には、その前年にシリアでISに捕まった湯川遥菜さんと後藤健二さんの拘束された姿が登場し、ジハーディ・ジョンと仇名されるアラブ系イギリス人がナイフを振りかざす様子が映し出されていました。
ISのメッセージを代弁する男の主張は、「日本の首相よ」で始まります。
要約すると、日本はイスラム国に対する十字軍に参加した、私たちを殺すために1億ドルを拠出した、私たちの敵の訓練にも1億ドルを拠出した、この人質たちを救いたければ72時間以内に2億ドルを支払え、という身代金要求の内容でした。
もちろん、一国がこんな犯罪者の脅迫に屈することはできません。この犯行声明に対して、菅官房長官が国内で、安倍総理がエルサレムでそれぞれ記者会見を開き、同様に強い憤りを表明した後、改めて「テロに屈せず、テロと戦う国際社会に協力していく」趣旨の決意を宣言し、2億ドルの人道支援についても変更はないと訴えました。
当たり前の話ですが、そもそも人を誘拐して身代金を要求するようなテロ組織が何もかも悪いのは確かです。公然たる脅迫に対して、安倍総理と政府が猛反発したのは当然のことでしょう。
他の大国であれば自国民解放のために特殊部隊を派遣し、殺害されたら敵に物理的な報復措置を取る例が多いですから、日本の対応はむしろ穏健なほうです。
ただ、問題は、劇場的要素が加わったことにより、この事件が異常な注目を浴びるようになったことです。エルサレムでの記者会見では、大きなホールに世界中の記者が詰め掛けました。そして、日本の支援表明からISの犯行声明、それに対する総理の記者会見までが一つのパッケージとして、世界各国でトップ級のニュースとして報じられたのです。
その時に使用された「絵」が、まさしく上に挙げたもの――日本とイスラエルの同盟関係を象徴――でした。
それと「対テロ声明」が一体となって、世界中に拡散されたわけです。当然、全世界のイスラム教徒に強い印象を刻んだことは否めません。
■広報の稚拙さゆえにイスラエルの同盟国であるかのような印象を与えてしまった安倍政権
「ああ、これは嵌められたな」と、私は直感しました。
明らかにプロパガンダの手法が用いられています。ロイターはわざわざBattle、Fight、Contendという三種類の語彙を用いて、読者に深く印象付けようとしている。
この通信社は英国の対外諜報機関であるMI6と繋がりがあります。
MI6というのは、あのジェームズ・ボンドが“所属”している機関ですね。
でも、正義の味方どころか、アフリカで小火器をばら撒いて紛争を煽っていたのがこのMI6です。本当は「影の支配者」の私的暴力機関の一つで、ここをモデルにしてCIAとイスラエルのモサドが作られました。
つまり、これらの諜報機関の真のボスは「見えざる政府」The Invisible Governmentなのです。
ただ、わざわざ飛んで火に入るほうも、いかがなものか。
私は安倍総理の言行は、「意図的な手先行動」というよりも、単に「鈍感の産物」なのだろうと想像しています。
もちろん、他方で、日本が支援を決断した背景も勘案しなければフェアとはいえません。「カイロ舌禍事件」を非難する有識者もこの背景に無理解な人が多い。
主に三つの理由があります。
第一に、シャルリー・エブド襲撃事件直後であったために、G7国家として西側国際社会に対して連帯を示めさなければならなかったこと。
第二に、中国問題とバーターになっていること。つまり、対中政策で欧米各国の支援を得たければ、対テロ問題で西側に歩調を合わせる必要がある、ということです。
第三に、実はこれがもっとも大きな理由ですが、エネルギー安保のため。
中東からのエネルギーの安定供給は、米ロと異なり、自給率の低い日本にとって死活問題です。だから、中東情勢が安定していなければならない。政府がISと戦う国を後方支援する必要があると考えたのは当然のことです。
つまり、日本は、中東やその地域のテロの拡大と無関係ではなく、最初から利害関係者なのです。中東から原油の大半を輸入している限り、生命線を握られているも同じで、それが嫌なら脱石油するほかない。
これらの背景を知ると、実は、日本は最初から状況を選べる立場になく、支援せざるをえないことが分かります。そして、支援自体は正しかったと、私も思います。
ただ、それを差し引いても、いかにもやり方がマズかった。
何が稚拙かというと、公表・広報の仕方です。実態は対IS戦の後方支援が入っていても、表向きはおくびにも出さず、ひたすら「中東の人々を助けるためです」「すべて純粋な人道支援・平和目的のためです」と言っておけばよかった。なんでいちいち「ISと戦っている国」などと付け足して、ISの反感を買う必要がありますか。
しかも、その翌日にネタニヤフと一緒のフレームに収まり、「テロ対策で両国は連携する」と宣言するとか……。
わざわざ火中の栗を拾ったに等しい。
おそらく、安倍総理やその周辺の官邸人脈は、欧米とりわけアメリカの歓心を買おうとしたのだと思います。
つまり、日本の政治的得点になると算段した。しかも、わざわざ国際社会に向けて勇ましく宣言することで、安倍氏は個人的にもヒーローになろうとした。大政治家であり、国際社会を動かすメインプレイヤーであるとの印象を与えたかった――そういうことだと思います。
ただ、そのせいで、イスラム教徒に対して、イスラエルの同盟国であるかのような印象を与えたことは、失策だったと言わざるをえません。
■予言された終末の救世主とは!? 新体動創始者の青木宏之さんに関係する人物か!?
さて、今後の話をしましょう。
ポール・ソロモン氏は宗教大戦を予言する一方で、それを克服する動きが起きることもまた予言しました。
しかも、「愛の法則」と「すべては一つ」の教えを説き、宗教間の争いを鎮め、統合を促す偉大な人物が日本から現れるという。
ソロモン氏によると、その人物は1991年の予言時には、まだ若い男性で、「アオキ先生」という武道の達人を師に持つらしい。その先生自身もスピリチュアルな人だという。
これに対して、「新体動創始者の青木宏之(アオキヒロユキ)さんではないか」という指摘が幾人もの方から相次ぎました。
(出典:「KARNA 9・10月号」2000年10月)
たしかに、一見してタダ者ではないと感じさせる風貌の方ですね。
ただ、青木さんの武道は、たくさんの人が修練しているらしい。
とすると、91年の時点で過去何百というお弟子さんがいたわけで、特定することは難しいかもしれません。
しかし、俗に「時代が人物を生む」とも言います。これから宗教をめぐる対立がますます激化していくにつれ、世界は真の精神的指導者の到来を待ちわびるでしょう。そしてそのような人物が本当に日本から現れるなら、私たちもぜひ応援しようではありませんか。
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