最近「UFOが呼べる」と称する人がテレビに登場する機会が増えた。しかも、番組収録中に呼んでみせるという企画がウケているようだ。
局側にしてみれば、安上がりでライブの臨場感を演出できるため、ゴールデンタイムでも一定の視聴率を狙えるらしい。
そういった番組では、たいてい“UFO”らしきものが実際に現れ、スタジオのタレントたちが「出た! 出た!」などと大騒ぎして盛り上げるパターンが多い。
だが、それは本当に「UFO=未確認飛行物体」なのだろうか。
最近放映された番組を検証してみよう。
坂本廣志(さかもとひろし)氏の例
まずは2014年12月27日に放映された「ビートたけし 超常現象(秘)Xファイル UFO」(テレビ朝日)である。
この番組では、隅田川の河原に立ったコンタクティの坂本廣志(さかもとひろし)氏が、見事にUFOを呼んでみせたかのように放映されている。
当日は雨天で、視界は最悪に近かったが、それでもVTRでは、たしかに総武線の鉄橋の上あたりで、光の点が上下する様子(画面下)を確認することができる。
案の定、スタジオのタレントの皆さんは画面を指差して大騒ぎだ。
いったい、この光の点は何だろうか。
種明かしをすると、東京スカイツリーのエレベータなのである。
坂本氏と撮影隊が陣取った場所は、たまたま個人的によく知っているが、浅草橋駅に近い隅田川の河原であり、ここから東京スカイツリーを眺めると、ちょうど鉄橋のアーチを挟む格好になるのだ。
このように、夜になると、LEDでライトアップされたスカイツリーは、青・赤・緑・紫・虹など、様々な色調に変化する。その塔の中を、さらに強烈な照明を放つエレベータが上下するため、まるで発光性の海中プランクトンのような幻想的な外観になる。
だから、雨天や濃霧の日は、一定以上離れると、本体の照明は見えなくなり、エレベータの照明だけが見えるようになるのである。
しかも、そのエレベータの速度は、メーカーの東芝によると、世界最高レベルの分速600メートルだ。だから、一見するとエレベータとは思えないほど、光の点が速く上下する。
そのうえ、複雑に組まれた鉄骨の中をくぐるため、角度によってはひょろひょろと螺旋を描いているようにも見えるのだ。
地元民にはおなじみの光景だが、知らない人だと、光の点の正体を誤解するのも無理はない。
武良信行(むらのぶゆき)氏の例
次は、2015年6月3日に放映された「水トク!『世界がビビる夜~UFO・UMA・ツチノコを追え!~』」(TBS)だ。
この番組では、スタジオ屋上に立つコンタクティの武良信行(むらのぶゆき)氏の呼びかけに応えて、二機のUFOが出現したかのように放映されている。
フレームの中では、たしかに二つの光の点がビルとビルの間に出現している。
しかも、あまり動かず、浮いているようにも見える。
むろん、タレントの皆さんは興奮状態で、しきりと「ホバリングしている!」と叫んでいる。この言葉には「飛行機だったら横に移動するはずだからUFOに違いない」というニュアンスが込められているようだ。
いったい、この二つの光点の正体は何だろうか。
答えはやはり飛行機なのである。
実は、これは比較的低高度のジャンボ機が、観察者の視線に対して「縦に動く」場合に見られる現象なのだ。
地平線と水平に移動している時は、すぐに飛行機と分かるのだが、向きを変えて縦方向に移動を始めた途端、オレンジの光が静止しているか、又はホバリングしているように見えるのである。
しかも、これは羽田空港の周辺上空では毎晩見られる光景なのだ。
高い建物から羽田方面の地平線を観察していると分かるが、毎日、夕方になるとこういった光点が、二つ三つ、同時に出現する。
下の写真は私が撮影したもので、長いものでは数分ほど静止して見えることがある。
たしかに、何も知らないと、UFOと誤認するのも無理はない。だが、これはあくまで観察者の視線に対して縦方向に動いているジャンボ機にすぎない。
空港から離陸して遠ざかる機の場合、このような光点は徐々に小さくなり、やがて消失する。逆に近づく機の場合は、徐々に光点が強くなるが、空港への着陸態勢に入るため、ある時点で急に向きを変えたり、下に移動したりして、建物の影に消えていく。
残念ながら、上の番組はそれを映したものに過ぎないのである。
UFO・エイリアン肯定派として
ちなみに、断っておくが、私はバリバリの肯定派である。
エイリアンの宇宙船は過去無数に地球に飛来し、その中にはUFOとして撮影されたものも多いと信じている。ユーチューブでも、画像の粗い初期には、そういった本物のUFO映像がたくさん存在した。
ところが、今では個人のイタズラ動画のほか、何らかの組織的な工作によると思われるCGのフェイク映像が大量にアップされている。
だから、ますます本物を見極めるのが難しくなっている。
やはり、そのためにも、CGや見間違えを見抜く眼力を養いたいものだ。
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