新約聖書の最後を飾る「ヨハネの黙示録」は昔から不気味な予言書として知られてきた。神の前にいる七人の天使がそれぞれラッパを吹いていく様をヨハネは幻視するのだが、なにしろ、そのたびに凄まじい災いがこれでもかと地上に襲い掛かっていくのだ。
たとえば、第一の天使がラッパを吹くと、次のようになるという。
血の混じった雹と火とが生じ、地上に投げ入れられた。地上の三分の一が焼け、木々の三分の一が焼け、すべての青草も焼けてしまった
(新共同訳 黙示録8:7)
「黙示録の獣」とは?
ヨハネによると、第七の天使がラッパを吹くとき、まさに最後の審判が訪れ、神の計画が成就するという。だが、同じ頃、七つの頭を持つ「火のような赤い竜」も天に現れる。これは「悪魔」「サタン」「全人類を惑わす者」などになぞらえられる悪の存在だ。
しかし、大天使ミカエルとその使いたちが竜に戦いを挑む。彼らは勝利し、竜を地上に投げ落とすことに成功する。竜は自分に残された時が少ないのを知って怒りに燃える。
さて、ここで「黙示録の獣(ビースト)」と呼ばれる存在が登場する。
同書は告げる。まず、同じように七つの頭を持つ第一の獣が海から昇り、竜の持っていた力と権威を与えられる。また、四十二ヶ月の活動と「あらゆる種族、民族、言葉の違う民、国民を支配する権威」も与えられ、多くの人々が獣を拝むようになる。
次に、今度は第二の獣が地中から現れ、やはり先に登場した獣の権力を引き継ぐ。
つまり、ちょっとややこしいが、要は「赤い竜」→「第一の獣」→「第二の獣」という流れだ。この第二の獣は、地上に住む人々に対して、先の獣の像を造るように命じる。
同書はこう予言する。
「第二の獣は、獣の像に息を吹き込むことを許されて、獣の像がものを言うことさえできるようにし、獣の像を拝もうとしない者があれば、皆殺しにさせた。また、小さな者にも大きな者にも、富める者にも貧しい者にも、自由な身分の者にも奴隷にも、すべての者にその右手か額に刻印を押させた。そこで、この刻印のある者でなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である。ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は六百六十六である。」(同13:15~18)(太字筆者)
666と電子管理社会
近年、この獣の数字を「616」と記した3世紀~4世紀頃の写本が発見されたというニュースがあったが、とりあえずその話題は横へ置こう。ここで取り上げたいのは、この不可解な予言(太字)についてである。というのも、1960~70年代に入って、バーコードやクレジットカードなどの電子的な決済・流通システムがアメリカで普及しだすと、この一節がにわかに現実味を帯び始めたとして、陰謀論界で注目され始めたからだ。
いわく、やがて世界的な独裁権力(=獣)が出現し、人々の身体に直接バーコードのようなものを印刷したり、ICチップや電子タグを埋め込んだりするのではないか……そんな懸念が陰謀論者たちの間で囁かれるようになった。また、インターネットが民間に普及し始めると、「ヘブル語アルファベットの“ヴァヴ”は数字の6とローマ字のWに対応するから、WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)は666を意味する」という説も登場した。つまり、インターネットはその独裁権力(=獣)の支配の道具ではないかというわけだ。
実際、インターネットの登場で、われわれの暮らしはますます電子的なシステムと切り離せなくなってしまった。便利になった反面、消費履歴が常に大企業に把握されるようになった。また、GPS装備のケータイやスマホを持ち歩くことで、常に居場所まで知られている。これに電子カルテ(病歴)や電子身分証などが一体化しようとしている。
よって、全市民の消費・動態履歴や個人情報が一元的にスパコン管理される未来は、決してSFの話ではなく、近い将来に実現するだろうと予想せざるをえないのである。
故アーロン・ルッソ氏の勇気ある暴露
ただ、以上はこれまで全部「噂」であり「仮説」にすぎなかった。
ところが、2007年、新世界秩序(NWO)の告発者であり人気ラジオ番組のホストを務めるアレックス・ジョーンズが、映画監督兼プロデューサーのアーロン・ルッソへのインタビューを公開したことで事態は一変する。ルッソはニック・ロックフェラーと親しく、前年にドキュメンタリー映画『アメリカ 自由からファシズムへ』を制作してFRB(連邦準備銀行)と所得税の法的根拠の無さなどについて告発したばかりだった。
このインタビューで、ルッソは、ニック・ロックフェラーからの情報として、9・11をキッカケとした「対テロ戦争」なるものが世界支配層のヤラセであり、その大きな目的が中東地域をNWOに取り込むことと、アメリカを管理社会(警察国家)へと作り変えていくことだと暴露した。また、事前に戦争開始の口実となる何らかの大きな出来事が予告されていたとして、9・11それ自体もヤラセの可能性が高いことを強く臭わせた。
どうやらニック・ロックフェラーは、ルッソが手ごわいNWOの敵になる前に懐柔してしまおうと企んだらしいのだが、彼は自分の信念に従って公共の利益のために内輪の話を何かもバラしてしまったというわけだ。そして、その暴露の中に含まれていたのが「人々にチップを埋め込んで支配する」という彼らの計画だったのである。
言ったように、この種の噂は、陰謀論界ではずいぶん昔からよく知られたネタだったが、間接的とはいえ、ロックフェラー家の人間の口から漏れたことで、一挙に信憑性が増したのである。
スマートホンがNWOの計画に利用されるのか?
ここでまた「黙示録」の予言に立ち返ってみよう。
予言には「右手か額に刻印がなければモノの売買ができなくなる」という内容が記されているが、その「刻印」は獣の「名前」か、もしくはその名を数秘術によって「数字」に置き換えたものらしい。そして、「黙示録」は数字が「人間を指している」と記す。
そこで多くの解読者は、これを「未来の独裁者のことだ」と解釈するが、「黙示録」はとくに“個人”のことだとは断っていないので、実際には「ある種の人間たちの集団」(=世界支配層=NWO)を意味しているとしても、何も不思議はないわけだ。
先程の「赤い竜」→「第一の獣」→「第二の獣」という関係性を思い出してほしい。この「赤い竜」が理念的なサタンを表すとしたら、その下に位置する「第一の獣」が「NWO=裏の政府」であり、さらにその下の「第二の獣」が「表の政府」を意味していると解釈すれば、妙にしっくりする。だから「第二の獣」が「第一の獣」を崇拝することを市民に強制するということは、日米欧などの表の政府がNWOに完全に乗っ取られた(隷属化した)状態を表しているのではないか。どうやら、これが終末の世界の状況らしい。
実際、世界(とりわけアメリカを筆頭とする西側諸国)は着々とそういう方向へと進んでいるような気がする。日本の「マイナンバー制度」も、世界的管理社会を実現する壮大なプログラムの、ほんのローカルな施策の一つに過ぎないのだろう。
ただ、人々に強制的にチップを埋め込む計画は、生理的な拒否感を引き起こし、「家畜じゃないぞ」という反発を招きかねない。しかも、ニック・ロックフェラーから計画が漏れてしまった。そこでNWO側は計画の修正を強いられている可能性がある。
私は「スマホ」が利用されるのでは、と考えている。スマホはICの塊だから、常に持ち歩かないと市民生活ができないようにすれば、人体に埋め込むのと同じことである。
つまり、自分専用のスマホがなければ何も買い物ができず、交通機関や病院や公共施設も利用できず、商取引や社会保障からも排除され、自分が何者であるかも証明できないよう、利便性の名の下に世界各国を「100%電子決済社会」に作り変えてしまうわけだ。
そのスマホは住民票やパスポートなど「電子身分証」も兼ね、また決済履歴だけでなくGPSを通して常に動態まで管理されるので、もはやジョージ・オーウェルの『1984年』ばりの超監視社会の実現である。体制にとって危険な人物は、その電子アドレスを削除するだけでいい。一瞬にして彼は生活できなくなり、社会から抹殺される。
ところが、スマホ最大手のアップルは、珍しく独立系の企業だ。だから、NWOサイドは次の大暴落で必ずアップルを買い叩きにかかるのではないか、と思っている。
(編集部から)
実は、「黙示録」の予言では、後にこの赤い竜と獣と偽預言者の口から「汚れた霊」が出て、ハルマゲドンと呼ばれる場所に全世界の王たちを集める話が登場します。その時、いったい人類は、そして全世界は、どうなってしまうのでしょうか?
2016年4月22日「トカナ」掲載
(*題名・見出し等は少し変更してあります)
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