今から約2600年前のユダヤの預言者エゼキエルといえば、奇妙なほど機械的な「神」に遭遇した人物として有名だ。それは金属製で、車輪と翼があり、光を放っていた。エゼキエルは他にも奇妙な体験をたくさんしているが、その一つが「死骨の復活」と称されるエピソードである。これがその辺のホラーも真っ青な恐ろしさなのだ。
以下はその内容を損なわずに当該部分を読みやすいように直したものである。
ある日、エゼキエルは「主の霊」によって連れ出され、いきなり枯れた人骨がいっぱい落ちている不気味な谷の真ん中に降ろされた。神は彼に言った。
「人の子よ、これらの骨は生き返ることができるか」
「主なる神よ、あなたのみがご存じです」
すると、神は次のように骨に向かって預言せよと彼に命じた。
「枯れた骨よ、主の言葉を聞け。これらの骨に向かって、主なる神はこう言われる。見よ、わたしはお前たちの中に霊を吹き込む。すると、お前たちは生き返る。わたしは、お前たちの上に筋をおき、肉を付け、皮膚で覆い、霊を吹き込む。すると、お前たちは生き返る。そして、お前たちはわたしが主であることを知るようになる」
エゼキエルは命じられるままに言った。すると、どうだ。
(見よ、カタカタと音を立てて、骨と骨とが近づいた。わたしが見ていると、見よ、それらの骨の上に筋と肉が生じ、皮膚がその上をすっかり覆った!)
しかし、その人体の中には「霊」が入っていなかった。そこで神はまた言った。
「人の子よ、預言して霊に言いなさい。主なる神はこう言われる。霊よ、四方から吹ききたれ。霊よ、これらの殺されたものの上に吹きつけよ。そうすれば彼らは生き返る」
エゼキエルはまた命じられるままに言った。
(すると、霊が彼らの中に入り、彼らは生き返って自分の足で立った。彼らは非常に大きな集団となった!)
こうして、枯れた大量の人骨は、彼の目の前で生き返ってしまったのだ。
このように、預言者エゼキエルは、神によって、今でいうCG映像のような光景を見せられたらしいのだ。むろん、この映像にはちゃんと「意味」もあった。神は一気にこう語った。
「人の子よ、これらの骨はイスラエルの全家である。彼らは言っている。『我々の骨は枯れた。我々の望みはうせ、我々は滅びる』と。それゆえ、預言して彼らに語りなさい。主なる神はこう言われる。わたしはお前たちの墓を開く。わが民よ、わたしはお前たちを墓から引き上げ、イスラエルの地へ連れて行く。わたしが墓を開いて、お前たちを墓から引き上げるとき、わが民よ、お前たちはわたしが主であることを知るようになる。また、わたしがお前たちの中に霊を吹き込むと、お前たちは生きる。わたしはお前たちを自分の土地に住まわせる。そのとき、お前たちは主であるわたしがこれを語り、行ったことを知るようになる」(以上「エゼキエル37:1~14」)
つまり、神はイスラエル人に約束しているのだ。いわく、おまえたちはいったんこの枯れた骨のように絶望的な状態へと陥るだろう。誰が見ても死んでいるとしか思えない。だが、そこからわたしが救い上げ、生き返らせて、元の祖国へと連れ戻してやろう。その奇跡によって、これが神の業に他ならないことを悟るだろう……というわけである。
そして驚くべきことに、事実そうなった。それは後の歴史が証明している。祖国を失った彼らは中世ヨーロッパで凄まじい迫害を受け続けた。極めつけは第二次大戦中のナチスによるホロコーストだ。ナチスは戦争相手でもない彼らを捕まえ、大量虐殺した。アウシュビッツやダッハウの光景はまさに「枯れた骨の山」そのままとなった。
ところが、その危機を乗り越え、世界中から集まった人々がイスラエルを建国した。神の預言、恐るべし、である。
さて、エゼキエルといえば、実は「終末予言」でも有名だ。彼は世の終わり頃に恐るべき最終戦争が起きることを詳細に予言している。そして、その日は近い、と欧米で囁かれ始めている。
2016年5月3日「トカナ」掲載
(*題名・見出し等は少し変更してあります)
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