あのノストラダムスの予言の中で、昔からどうしても気になっていた詩がある。それが「5月の大地震」に関するものだ。ポイントはそれが二つもあることだ。つまり、それだけ人類史的な意味があることが示唆されており、昔から研究家たちの興味を引いてきた。
ちなみに、以前、私はいわゆる“科学的”な観点からノストラダムスのことをまったく信じていなかったが、今では異なった見方をしている。先日、ユダヤ教の基礎を作り上げた大預言者のエズラを取り上げたが、彼は瞑想と断食によって“神的領域”へと踏み込んだ人物である。それによって、彼は現在の世界が終わる際の「サイン」を知ることができた。それは「突如として夜中に太陽が輝き、真昼に月が照る」という不可解なもので、2500年間ずっとミステリーだったが、以前の記事で述べたように、最近になってようやくその謎が解けた。そして、それから約5世紀後。かのイエスもまた瞑想と断食によって“神的領域”へと踏み込んだと思われ、やはり終末に関するビジョンを語っている。
実は、このユダヤの秘術は「カバラ」の構成要素として代々継承された。中世ヨーロッパの錬金術師(アルケミスト)たちも、このカバラの影響を受けたか、あるいはほとんどカバラ主義者そのもので、のちに職業組合だったフリーメイソンに入り込み、思想的政治的な結社へと作り変える原動力となったようだ。中世においてこのカバラの伝統を密かに受け継いだ家系こそ、実はノストラダムス(彼もまたユダヤ系である)の一族ではなかったか、と私は考えている。彼がエズラやイエスのように凄まじい断食修行までしたかどうかは分からないが、少なくとも深い瞑想状態に達していたことは、詩や手紙からも察することができる。それについて細かく記す余裕はここにはないので、興味のある方は拙著『神々の予定表(アジェンダ)』をご覧になってほしい。
さて、前置きが長くなったが、以下がその「5月の大地震」に関する預言だ。
太陽は金牛宮の二十度、非常に強く大地が震える。
満員の大劇場が崩れるだろう。
大気、天空、大地は暗く、混濁し、
そのときには不信心者が神や聖人たちに祈るだろう。
(百詩篇集 第9巻83番 山津寿丸氏訳)
5月に非常に強い地震。
土星は磨羯宮に。木星、水星は金牛宮に、
金星も同じく。巨蟹宮は火星に。アノネーでは
その時に卵より大きな雹が降るだろう。
(百詩篇集 第10巻67番 山津寿丸氏訳)
解説したい。この冒頭の「太陽は金牛宮の二十度」とは、占星術的には5月を指すという。だから、どちらの詩も同じ「5月の大地震」を表していると思われる。
あのノストラダムスが念を押すように二度も載せたということは、なにかよほどの出来事に違いない。それだけ世界史的な意味を持つと考えられる。ヒントは「満員の大劇場が崩れる」という一節だ。これは大都市の情景と考えられる。空や大地が「暗く、混濁」してしまうのは、それだけ大量の粉塵や黒煙が発生するからだろう。
恐ろしい話だが、ある都市が酷く破壊され、それがキッカケとなって全世界に悪影響を及ぼすらしい。
これを今日のフレームで考えてみると、世界(経済)への影響力の大きい国が候補として浮上してくる。すると、真っ先に思い浮かぶのが日米である。
実は、アメリカ西海岸では、M9クラスの巨大地震が迫っている。この地域を南北に縦断するサンアンドレアス断層はなんと1300km――東日本大震災をゆうに超える――にわたるという。そして近年、全米の学者たちが次々と警鐘を鳴らし始めている。
同様に、日本でも関東大震災や南海トラフ地震などの発生が懸念されていることは皆さんもご存知の通りである。私的には、どうも日本の大震災を予言しているような気がしてならない。日本人のノストラダムス研究家は、とにかく日本とこじつけたがる傾向があるが、実際には、ノストラダムスは欧米と中東以外の地域については、ほとんど関心がなかったと思われる。しかし、この詩にはあるヒントが隠されている。それが「不信心者が神や聖人たちに祈るだろう」という一節だ。この「不信心者」が“異教徒”を表しているとしたらどうか。これに「近未来に大地震の発生が予想されている地域」と「その際の世界への悪影響」という二つの要素を勘案すると、条件的にはかなり絞り込まれてくる。
仮にこの「5月の予言」が日本の大震災を表しているとすると、おそらく欧米にも悪影響を及ぼすような、世界史的な出来事となる可能性が高い。たとえば、「世界恐慌のキッカケになる」という具合に。いわば、日本の大震災が「世界経済の心臓発作」を引き起こすわけだ。仮に関東大震災や南海トラフ地震が起きれば、その可能性は十分にある。
あるいは、日米の地震が連続することを予言しているのかもしれない。つまり、同じ5月の予言でも、実際には別個の出来事を指しているというわけだ。それとも、意外に中国を表しているのかもしれない。“異教徒”といえば、彼らもそうだからだ。
しかも、これは強調しておきたいが、「5月」といっても、予言詩からはいつの5月かまでは分からない。よって、発生は来年かもしれないし、もっと未来かもしれない。ただし、詩にあるように、ノストラダムスは未来の人々のために、わざわざ重要なヒントを書き残してくれている。それがフランスのアノネー(Annonay)で卵大の雹が降るとの一節だ。調べてみると、そういう雹はしばしば世界各地で降っていることが分かった。
詩からは、それが出来事の前か、それとも最中かは、判然としない。仮に、まだ何も起きていないうちにアノネーで卵大の雹が降ったら、俗に言う「フラグが立った」と考えていいと思う。予兆を真剣に受け止め、備蓄を強化するなどの対策を全力で取ってほしい。もしかすると、ノストラダムスがあなたの命の恩人になるかもしれない。
2016年4月20日「トカナ」掲載
(*題名・見出し等は少し変更してあります)
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