前8世紀の大預言者イザヤは、当時、南北に分かれたイスラエルにあって、将来の国家滅亡を予言したとされている。ただし、彼のアッシリア侵攻やバビロニア侵攻の予言は後代に付け足されたものだという批判的立場の主張も排除すべきではない。
もっとも、今回取り上げたいのは、予言そのものの真偽ではない。ニューヨークの国際連合プラザに、この大預言者の言葉が刻まれた、通称「イザヤ・ウォール」(Isaiah Wall)と呼ばれる壁が存在する。実は、これが国連の本質を密かに示したサインになっている。つまり、分かる人(=目的を共有する仲間)には分かる仕掛けである。
ちなみに、ここでいう国連(United Nations)とは、言うまでもないが、軍事同盟の連合国(United Nations)ではなく、戦後に国連憲章に基づいて創設された国際機構としての国連のことである。ちなみに本部の土地を提供したのはロックフェラー二世だ。
それでは、旧約聖書から引用されたその銘文を以下に紹介しよう。
They shall beat their swords into plowshares,
彼らは剣を打ち直して鋤とし、
and their spears into pruning hooks;
槍を打ち直して鎌とする。
nation shall not lift up sword against nation,
国は国に向かって剣を上げず、
neither shall they learn war any more.
もはや戦うことを学ばない。(イザヤ 2:4)
つまり、この国連の銘文は、もはや武器を必要とせず、国々が互いに争うことのない平和な世界の到来を謳っている。だから、戦後の国際連合機構は、そのような理想の世界の建設を目指して創設されたものだと、誰もが考えるはずだ。
とくに、戦争で悲惨な目にあった日本人は、戦後の理想そのままだとして感動すら覚えるのではないだろうか。実際、新憲法施行後に文部省が発行した社会科用の冊子には、この銘文を体現するかのような絵が掲載されている(*実はこれも偶然ではない。後述)。
■それは文書トリミングだった! 果たして真の意味とは……!?
ところがである。これはイザヤ書の2章の、ある一部だけを抜き取ったものにすぎないのだ。実は、全文は次のように記されている。
アモツの子イザヤが、ユダとエルサレムについて幻に見たこと。
終わりの日に
主の神殿の山は、山々の頭として堅く立ち
どの峰よりも高くそびえる。
国々はこぞって大河のようにそこに向かい
多くの民が来て言う。
「主の山に登り、ヤコブの神の家に行こう。
主はわたしたちに道を示される。
わたしたちはその道を歩もう」と。
主の教えはシオンから
御言葉はエルサレムから出る。
主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。
彼らは剣を打ち直して鋤とし
槍を打ち直して鎌とする。
国は国に向かって剣を上げず
もはや戦うことを学ばない。
ヤコブの家よ、主の光の中を歩もう。(イザヤ 2:1~5)
この詩の意味がお分かりだろうか。
つまり、大預言者イザヤが見た幻とは「ユダヤが諸国民の王として全世界を従えた光景」だったのである! 世界中の国々が“大河のように”世界首都エルサレムにある神殿にお参りして、神様の指導を受ける様子を表していたのである!
きっと終末にはこうなるぞ、とイザヤ先生が予言しておられるのだ。
しかも、ワンワールドだけでなく「ワン宗教」ですらある!
そうなったら武器も要らないし、戦争だってなくなりまっせ、という意味で「剣を打ち直して鋤とし…」などと謳っているのである。
■ワンワールド主義者にとってそれはパクス・ユダエウス Pax Judaeusだった!
これで、なぜ前半部分をばっさりとカットしてしまったのか、いや、隠してしまったのか、お分かりだろう。国連ビルの銘文が真に意味するのは「パクス・ユダエウス=ユダヤによる平和」(Pax Judaeus)だったのである。
これが、彼らが国際連盟を、そしてその次に国際連合を作った、真の理由である。彼らは今やそれを発展解消して、世界政府とワンワールドへと進化させようとしている。グローバル経済、TPP、IS問題、パナマ文書、世界恐慌、世界大戦……すべてはこの文脈の上で起こった、又は将来起こる出来事だと見なしても、そう間違いではないと思う。
もっとも、この場合の「ユダヤ」とは特権的なグローバル・ユダヤのことであり、大多数を占める一般のユダヤ人は、国際的な陰謀に何の関係もないばかりか、むしろ犠牲者ですらある事実は銘記しておきたい。極めて特異なグループがたまたまユダヤの出身だったために旧約聖書を重視しているにすぎない。彼らは自分たちへの批判をかわすために、むしろ反ユダヤ主義を上手に利用してきた方なので、普通のユダヤ人に対して敵意と偏見を持つことは、かえってグローバル・ユダヤを助ける愚行でしかないことを強調しておく。
最後に付け加えておくと、『あたらしい憲法のはなし』の絵がイザヤ予言のメタファーだとしても、何も不思議はない。その憲法の創案に関わったのがユダヤ人だったし、当時の文部省はまだGHQの支配下にあって、発行する書籍はいちいち検閲を受けていた。戦後日本の改革を担ったのがGHQ内のユダヤ人頭脳集団だった。実は、彼らが自分たちの理想を実現するための格好の実験台と見なしたのが、終戦直後の日本だったのである。
だから、その秘密を知っている元東京在住のラビのトケイヤーは『ユダヤ製国家日本』などという、一見不可解な題名の本を出したのだろう。
2016年9月6日「トカナ」掲載
(*題名・見出し等は少し変更してあります)
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